約束の火曜日になった。
田村くんは私よりも先に、集合場所に来ていた。
どうやら、彼が一番乗りだったしい。
私の姿を見て、うれしそうに手を振っている。
しかし、肝心の島原君の姿がなかなか現れないので、私は少し不安になった。
そんな私を見て、彼は優しく言った。
「きっと来るよ。だって男の約束じゃん」
彼の横顔は、夕暮れ色に染まり、その美しさをさらに際立たせていた。
とても澄んでいる瞳は、吸い込まれそうなほど。
どこをとっても非の打ちようがない、そんな彼につい見とれてしまう・・・。
「わりぃー、わりぃー」
遠くから謝りながら、島原君が小走りにやって来た。
「おっせぇーぞ。怖気づいたのか」
そんな島原君に向かって田村くんがからかうように言う。
今のこの二人の間には、最初に会ったときのような刺々しさはもう感じられない。
それよりも、むしろ友情のようなものを感じることができた。
「じゃあ、そろそろ行きますか?」
意を決し、私たちは店に向かった。
島原君も観念したように、後からついて来る。
今日は絶対に彼女がいる日。
島原君は、前回以上に緊張した様子。
動きがぎこちなく、手と足が一緒に出てるよ!!
「いらっしゃいませ」
明らかに前回の時とは違う声に迎えられ、私たちは店の中へ入って行く。
カウンターにはマスターらしき人が、コーヒーを入れながら「いらっしゃいませ!」と、こっちを見て言った。
私たちは、空いている奥の席に座ると、先ほどの声の持ち主が水とおしぼりを持ってやって来た。
「どうぞ!ご注文は?」
島原君が一目ぼれしたという彼女は、私が想像していたよりずっとかわいかった。
島原君が一瞬で好きになるのもわかる気がする。
その上、外見だけでなく優しい性格とくれば、申し分ないではないもの。
「俺、アイスコーヒー」
「私も」
「えっとー、俺は・・・」
島原君が真っ赤な顔してメニューとにらめっこsていると、彼女が叫んだ。
「あっ、あなたはこの間のお客様!!あれからケガ、よくなりました?」
「えっ、俺のこと覚えてくれてたんすか?」
「はい。あんまり傷がすごくて痛そうだったので・・・」
島原君はとても照れた様子で、出されたおしぼりで一生懸命汗を拭いた。
これはいいぞ!
彼女、島原君の事覚えてるよ!!
ってことは、少しは脈ありって事?
などと想像しながら、彼らを見守っていたが、なかなか島原君の口から肝心の言葉が出てこない。
すると、業を煮やした田村くんが、島原君の腕をひじで突っついた。
島原君は思い出したかのように、緊張しながらたどたどしく言った。
「えっとぉーーー、あの時ぃーー、カットバンくれたろ。そ、そ、その、お礼というかぁーー、もしよかったらぁーー、今度の花火大会にぃーー、いっ、一緒に行って・・・もらえませんかっ??」
彼女は驚き固まった。
無理もない、だっていきなりデートの誘いだもん。
でもあと一息!!
頑張れ島原君!!
しばらく沈黙が流れた後、彼女の口から出た言葉は・・・・。
「本当ですか?私も一緒に行く人いなくて。うれしいです。私でよかったら、お願いします」
な、なんと彼女のOKの返事!!
あっという間に、島原君は彼女との花火大会に行く約束を取り交わした。
話がうまく進んみ、めでたし、めでたし。
しかし、さっき彼女が田村君を見たときの反応が、少し気にもなっていた。
が、これは私の思い過ごしのようだった。
島原君はうれしそうに彼女と話をしながら、私たちが邪魔だといわんばかりに、店から出て行くよう手で合図した。
用済みになった私たちは、一気にアイスコーヒーを飲み干すと急いで店を出た。