三日目。
とうとう最終日となった。
今日は集団で、お寺参りや、お土産を買ったりした後、学校に戻る予定になっていた。
もちろん、ガイドは安西さん。
今日も張り切っている様子で、みんなに元気に挨拶をしていた。
「みなさん、おはようございます。京都の街も、これで最後になりますが、今日一日楽しく過ごしていきましょう」
昨日の中川君とは、あれからどうなったのだろう。
彼女は昨日と変わらぬ様子で、マイクを持っている。
私の隣で田村くんは相変わらず、整った顔を窓の外に向け、物思いにふけっている。
そんな彼が私の視線に気づいたのか、私の手を安西さんに見えないようにそっと握ってきた。
私は心臓がドキドキしながらも、彼にされるがまま、じっと手を動かさずにいた。
手から田村くんの愛が伝わってくる気がする。
もう、安西さんに嫉妬なんかしない。
どんな女性たちが、彼を狙ってこようとも、私は決してうろたえたりしない。
昨日彼と一緒にいて、どれだけ私のことを思ってくれているかを知ったから。
そんな余裕も出て来た私は、安西さんの存在を恐れることはなくなった。
「おはよう。今日も大丈夫?」
安西さんが、心配そうに田村くんに尋ねたた。
「おはようございます。薬飲んだんでばっちりです」
元気に答える彼。
「今日はお寺巡りとかでしょ。私も一緒にまわれてうれしいわ、今日は」
遠まわしに、『今日は』の言葉だけが強調されているように感じられた。
確かに昨日のことを思えば、そうも言いたくなる気持ちもわかる気もする。
今日で最後だと思うと、彼女も必死なのだろう。
恐るべし、バスガイド、安西麗華。
彼女は今日の最終日、またなにか仕掛けてくるだろう。
これで、中川君が残念な結果に終わったことは明らかになった。
しかし、その田村くん、そんなことなどまったく気にすることなく、窓の外の景色を眺めている。
きっと彼にとって、安西さんの存在など眼中にないらしい。
すべての日程を無事終了し、バスは学校へ到着した。
結局安西さんの健闘虚しく、なんの進展もみることなく、彼との別れの時がやってきた。
彼女は少し目を潤ませているようだ。
当然の結果とはいえ、なんだか複雑な気持ちである。
そんな彼女を乗せたバスが、学校から走り去って行った。
ふう、やれやれ!
なにはともあれ、私にとってとても楽しい修学旅行になった。
田村くんとのたくさんの思い出もできて、本当によかった。
修学旅行の次は、またまた楽しい夏休み。
もう、すぐそこまで来ていた。