「もしもし、中野です」
「ご苦労様。いやー大変なことになりましたねえ。そこで中野先生にお願いがあるのですが。担任であるあなたに、彼を救出に行ってほしいのです。時間もないことですし、後のことは小山先生に頼んであります。一刻も早く田村くんを救出してあげてください。では、よろしくお願いしましたよ」
田村君の話を、校長先生までもがすっかり信じていた。
学校一の成績をもつエリート少年の話は、少しも疑われることはないらしい。
例えそれがあまりに信じがたい嘘であったとしても・・・。
早速小山先生は、校長先生と話た内容を、私に教えてくれた。
そして、私を一人向かわせることへの後ろめたさからか、すまなそうな顔をして見送ってくれた。
しかし、小山先生の気持ちとは裏腹に、私の気持ちは喜びにあふれていた。
だって待機の任務から解放されるのだもの。
これで誰に遠慮することなく、京都の街を見てまわれる。
もちろん、田村くんだって忘れてはいない。
それが何より、私の心を喜ばせているのだから。
これで田村くんに堂々と会いに行ける。
本来なら、慎重な顔でいなければならないところだろうが、自然と顔がほころんでしまうのは、仕方がない。
ああ、なんて素敵なの!!
迷子になった田村くんに、私は感謝の気持つほどだった。