電話の内容はこうだった。
彼のグループは、ガイドの安西さんと一緒にホテルを出た。
そして彼女に案内されるまま、目的地に向かって歩いていた。
途中、移動手段として電車を使ったらしいのだが、そこで大問題が発生した。
なぜか田村くん一人だけ、途中ではぐれてしまったらしい。
必死にみんなを探しているうち、なんと田村くん、目的地と反対方向の電車に乗ってしまったと言うのだ。
そのうえ運が悪いことに、その電車が近くの駅で止まることなく、かなり遠くまで行ってしまい、持っていたお金も、あとわずかしか残っておらず、帰りの電車代には足りない状態らしい。
おまけに携帯の電池も残りわずか。
もう、どうしようもない窮地の状態らしかった。
結局、京都の街に一人放り出され、途方にくれた田村くんは、待機役である私たちに助けを求めてきたということだった。
あと、彼のグループの仲間にも、自分は無事だと連絡してほしいということだった。
この話を聞いた私は、なんてバカげたことだ!とすぐに思った。
田村くんほどのエリートが、なぜこんなミスを犯すのか?
きっとこれにはなにか裏がある、そう思えて仕方なかったからだ。
しかし、そんな私とは対照的に、小山先生はまったく疑うことなく、必死で生徒たちの名簿をめくりながら、電話番号を探している。
その様子は、かなり動揺しているようだった。