「でも、僕、お邪魔ではないですか?」
ほらきた!やっぱり無理なのよ田村くんには。
「そんなことないわよ。気にしなくていいのよ」
「そうだよ。ほら、美紗都もなんか言ってあげなさい。田村君困っているじゃないか。お前、先生なんだから」
困ってるのは父さんたちの言葉によ。
無理させてるのはみんなの方なんだから。
「田村君、本当にいいのよ。うちは田村君がいるだけで、妙に盛り上がっちゃってるし。そのほうがみんなうれしいのよ。いつもはこんな風に会話なんて弾まないんだから。だから、田村君さえよければ、ここにいてほしいのよ。でも、田村君のほうこそ、気を使って嫌なんじゃない?ごめんね。勝手に」
精一杯、彼のことを考え、彼に良かれと思って言ってみた。
しかし、彼から返ってきた言葉は、とても意外な言葉だった。
「いえ、僕うれしいです。休館って聞いたときは、目の前真っ暗って言うか、どうしようって不安でした。でも、こうし
て先生のご家族の方々にとても親切にしていただいて。本当にうれしいです。僕、失礼なことを言うようですが、、気を使ってないって言うか、逆になんかすごく居心地よくって・・・。あっ、こんなずうずうしいこと言って、本当にすみません」
「ははははっ。いいの、いいの。気にしなくって。そうか、居心地いいか。いや~、うれしいねぇー。そんなこと言ってもらっちゃってさ。本当に君はいい生徒さんだ。母さん、酒も用意してくれよ」
「はいはい。まあ、お父さんたら喜んじゃって。いいのよ、田村君。もうお寿司も頼んだんだし、食べてもらわないとね」
「いいね~若い子は。ねぇ、ミーちゃん!」
なんだか知らないうちに、彼はすっかり私の家族と打ち解けた様子だった。
いろいろ先行き不安だったけど、落ち着くところに落ち着いたって感じ。
とりあえず、一件落着といったところか。
私の家族は、すっかり田村君が気に入った様子だった。
特に父は上機嫌、普段は無口なくせに、今日はとてもテンションが高く、おしゃべりになっている。
こんな光景を見ていると、やはり胸は痛んだが、今はこのままでいさせてほしいと密かに願っていた。
それはきっと、田村くんも同じ気持ちだったに違いない。
家族と笑顔で会話している彼を見ていると、素直にうれしくて。
いつの日かまた、嘘偽りない形で、こうして家族楽しく会話できる日がくることを、祈らずにはいられなかった。