一時間ぐらい走り続けていたバスが、サービスエリアで休憩のため停車した。


私たちはバスから降りると、外の空気を吸った。


自然が多いこの場所の空気は、やはり違っている。


彼は自動販売機へ行き、飲み物を買っていた。


学校以外で見る彼はの姿は、私服のせいか少し大人びて見える。


黒髪に整った顔立ちは、離れた場所から見ても美しい。


今、ここにいる誰一人、私たちの関係を知らない。


そのことが、とても気分を開放的にさせる。


彼もきっと同じ思いなのだろう、いつもより瞳が輝いているように思える。


再びバスに乗り込むと、また一時間ほどバスに揺られ、とうとう目的地である私の実家周辺に到着した。


ここへ着くころには、もう乗客は二人だけ、まるで貸切状態になっていた。


随分快適な移動手段だった。


「結構遠いんだね、ミサトチャンの実家って。ここへ来たの、俺生まれて初めてだよ。ミサトチャンのふるさとかぁ。ここで育ったんだね。そして大人になって教師になり、俺と出会って、恋に落ち、二人一緒にまたこの街に戻ってくる。なんかこれって感動するよね。なんかすげぇーじゃん」


「もう、なに一人でお気楽なこと言ってんの?いーい、ここから先は覚悟していかなきゃね。一歩間違えば、命取りだからね」


「なにそれ。命取りって・・・。ミサトチャン、日本語の使い方間違ってるよ」


「そりゃーそうでしょ。だって私は英語の教師なんですもの」


我ながら決まったって思ったのに、彼はもうすでに先のほうを歩いていて、私の話など聞いていない。


それにしても、彼がどんな作戦を考えているのかは知らないが、私の家族に会いたいと思ってくれた気持ちは、正直はうれしかった。


でもまさか、このような形で両親と会うことになろうとは思ってもみなかったけど。


今日これから先、どんなことが待っているのかは全く予想できなかったが、彼に運命を委ねるしか方法はなさそうだ。