「なに言ってんのよ。心配したからに決まってるじゃない。あの人数相手に田村君一人で大丈夫かって。もしもの
こととか、いろいろいっぱい考えたんだからね。それに、喧嘩の仲裁なんて生まれてはじめてのことだもの。本当はすごく、すごく怖かったんだから・・・」
私はありったけの思いを、彼にぶちまけた。
「それって、教師として?それともミサトチャン個人として?」
こんな状況で、よくそんなことが言えるなあと思った。
しかしこの状況は、今の私には、どう考えたって不利だ。
彼の顔は、私の真上にあって、息が掛かるくらい近い。
こんな距離で嘘を言えって言われても、言えるわけがなくて。
それは、まるで心の中まで見透かされているのと同じ状況だった。
それに・・・・。
私の心は、このまま終わらせたくない気持ちのほうが、大きくなっていた。
田村くんを好きだという気持ちが大きくなりすぎて、自分を抑えることができなくなっていた。
私は彼のことを好きになっていた。
例え教師を辞めることになったとしても、私は彼を選びたいと思った。
「そうよ。田村君の言うとおり。もうこれ以上隠せないわね」
すると、彼の顔が見る見る輝き、先ほどまでの刺々しさはすっかり消えていた。
「えっ、それって・・・、つまり・・・、俺のこと好きってことだよな」
私は素直に頷いた。
「やったー!マジで。ねぇ、ミサトチャン、マジで俺、うれしいよ」
そう言って、彼は私を強く抱き締めた。
「じゃあ、喧嘩止めたことは、これで帳消しということで」
彼の唇が、そっと私の唇に重なった。
私は全身の力がすーっと抜けていくのがわかった。
やっと自分の本心を打ち明けられたことで、今までの胸のつかえが取れた気がした。
これで、彼を苦しめなくてすむと思うと、自然と心が安らいでいく。
しかし、彼のことを好きだと認めた以上、今後、大変なことが待ち受けていることだろう。
本当に、教師を辞めなくてはならない日が来るかもしれない。
でも、今は、彼の優しさに、そして温もりにこうして触れていたい。
今まで抑えていた分も、ずっとこうしていたいと思った。
彼に触れられる度、だんだん考えることができなくなっていった。
彼のこと以外は・・・・。