次の日はやはり雨だった。


しばらく晴天が続いていたせいか、木の葉や植物たちがとても潤って見える。


雨に濡れながら咲いている花は、とても美しかった。


それにひきかえ、私の心はひどく沈みきっていた。


昨日はあれから職員室に戻り、テストの採点作業に追われることとなった。


テストの採点は、教師全員で行い、日々その結果がわかる仕組みになっていた。


採点は、今日の最終分を残すのみとなっていて、当然私は、その結果がとても気になっていた。


他の先生たちも、理由は違えど、同じ気持ちだった。


ここまで満点をとり続けている田村亮介に、注目が集まらないわけがない。


彼の点数は、こちらが聞くまでもなく、他の先生がその都度発表してくれた。


そして、彼の記録がのびる度、職員室に先生方の歓声が響いた。


このままいけば、Y高校始まって以来の快挙を達成できるかもしれない。


当然、先生たちのテンションもヒートアップしていた。


そして今からそれが現実のものとなろうとしていた。


今日のテストは、数学と古文だった。


私は、一年生の採点を担当していた。


一枚、一枚、気をつけながら採点していると、赤坂先生が興奮気味に叫んだ。


先生たちの手が止まり、一斉に彼女に視線が集まる。


「やったわ!すごいわ。すごい」


これで、田村亮介の採点は赤坂先生がしていることがわかる。


そして、そのテストが満点だということも。


「田村君、また満点ですね」


「はい、校長先生。古文も満点です。本当にすごいです。採点する手が、震えてしまって。こんなこと教師になって初めてですわ」


「まあ、本当にすばらしいことですわ。残すは数学だけですわね」


普段はおとなしく、冷静な教頭先生までも、彼の快挙に興味津々のご様子。


「数学も、もう少しです。私も手に汗が・・・」


教育指導の林先生が、採点しながら言った。


最後の数学を林先生が採点していることがわかると、彼の周りに先生が集まった。


「おお、いまのところパーフェクトですな」


「これはもう、間違いなくいくでしょう」


「何でしょう。このワクワクする気持ち。テストの採点でこんな気持ちにさせてくれるなんて、田村君は本当にすごい生徒ですね」


口々に話す口ぶりに、みな興奮が隠しきれないようだ。


しかし私は、そんな話を耳にする度、気持ちが複雑で・・・・。


彼が言った条件が、もうすぐ達成される。


本来なら、担任として喜ぶべきことなのだが、私自身としては、やりきれない気持ちでいっぱいだった。


「やりましたよー!満点です。数学も百点満点!これで全教科満点達成です。すごい快挙です!」


うぉーという歓声とともに、拍手が沸き起こった。


「本当にすごい奴ですよ、田村亮介は」


隣の小山先生が、そう話しかけてきた。


とうとう恐れていたことが、現実のものとなってしまった。


次第に青ざめていく顔。


私は小山先生に、無言で頷くだけしかできなかった。