朝目が覚めると、昨日の出来事がすべて夢であってほしいと切に願った。
しかし、その願いは聞き入れられず、現実は何一つ変わることはなかった。
私は、台所で昨日約束した卵焼きを作っていた。
彼の顔が時折ちらつき、手元を狂わせる。
なぜああいう状況になってしまったのだろう。
私が屋上に行ったから?私がお弁当を持っていたから?私が彼に近づいたから?私が彼の顔に付いたご飯粒をとったから?って何で自分ばかり責めなきゃならないのよ。
そう考えると、だんだん腹立たしくも思えてきたが、結局どう解決することもできず、現状にただ落ち込むだけだった。
卵焼きをたくさん詰めたお弁当をかばんに入れ、学校に向かう。
気持ちは憂鬱だったが、天気は雲一つない晴れ空で、それだけが唯一の救いだった。
今日の最初の授業は、田村くんのいる自分のクラスからだった。
いきなり緊張がはしる。
しかし、時間は待ってくれない。
「おはようございます。今日も一日頑張っていきましょう。もうすぐテストです。きちんと計画を立てて、時間を有効に使いましょう」
黒髪の彼が、じっとこっちを見ている。
言いたいことはわかっている。
約束は約束。
そんな彼を無視して、私は生徒に神経を集中させた。
「では、出席をとります」
名前を呼ぶうち、とうとう彼の番になった。
「田村くん」
一瞬、声が裏返りそうになった。
「はい。昨日から黒髪の田村です」
彼の発言で、教室中に笑いが起きた。
彼は、無視する私に対し攻撃を仕掛てきたのだ。
私は集中力が弱まるのを、必死で立て直しながら出席をとり続けた。
最後の生徒を呼び終えると、授業を続けた。
「集中!集中!」と心の中で何度も叫びながら。