あぁ、また聞こえた
私達一族が持つ特異な耳が
命が尽きた者の声…悲鳴を…拾う
幼い頃はこんなにも命が尽きるということは恐ろしいものなのだろうかと思っていたが、
今は違う。
命の灯が消えるとは、何よりも怖い
カガリビト 第1話 眠る街を駆け行く
夜。全てのモノが眠る時、女性は1人走っていた。
黒いフードコートで全身を覆った、一見怪しい女性。しかし、そのフードから覗く銀色の髪は、黒に映えており怪しいながらも艶やかさを持っている。
黙々と走る様は人間とかけ離れた、まるで神の様…
まぁ、そういうと、本人はしかめ面をするのだが…
話を戻そう。
彼女は神に近い存在である。
肉体を失った魂を天へ運ぶ者。人は彼女を悪魔とも死神とも天使とも呼ぶ。
しかし真の名は否。
魂を天へ運び、世の中の理を正す様は縢り糸の様な様から彼らをカガリビトと言う。
カガリビト…それがカガリ・ソウルキャリアー
の二つ名であり、職であり、役割であり、使命であった。
「滅びの声はこのあたりの筈…」
滅びの声…人間で言う死ぬ間際の断末魔が聞こえるカガリビト達はそれを頼りに魂を探す。彼女が聞いた滅びの声は街から少し外れたところに位置する森の中だった。
森の中に一本だけある大樹に来れば、幹にもたれ掛かる一体の死人。他殺なのか、体中に刺し傷があり、その無残さにカガリは顔をしかめる。そばにはまだ、光り輝く魂の光。魂は死んだときの感情を色で表すというが、その魂の色は、悲しみと絶望の濃い青…インディゴブルーだった。
カガリが、その魂にそっと触れると、呼応するかのように、魂が揺らめく。
「辛い死を遂げたのか…大丈夫…今、楽にしてやる」
そう魂に語りかけると、カガリは右手を口元に持ってきた。そして、小さな声で何かを呟き、息を吹きかけるとボゥと音をたて、右手のひらにオレンジの炎が現れた。
その炎はゆらゆらと揺らめき、強い光を放つ。
カガリは、空いた左手で魂を支えると、おもむろに、右手の炎を魂にあてた。
「ゆらり、ゆらめくその魂は、終わり。身体から離れ、天へ昇ること汝の宿命。我らカガリビトはその魂を運ぶ者。温かな火に包まれ、赤子のような安らぎの中、朽ち果て、生まれ変わらんことを…」
まるで、赤子をあやすように言葉を紡ぐカガリの声にいインディゴブルーの魂が安らぎのオレンジへと変わり、カガリの炎に溶け込む。その様を確認したカガリは左手先を天へ向け、息を吹きかけた。
すると、炎はまるで気球のように、フワフワと天へ昇る。そして、夜闇の中へと消えていった。
カガリはふと、死体を見ると、悲しそうな顔をして、死体の傍らに炎を灯した。燃やすものも無く燃える炎。
「すまない。私には永遠の力が無い。だから目印をしておく。いずれ気付いた私の弟があなたの身体を永遠の物にするだろう。私と魂を分けた…弟のクチナシによって…」
喋ることなどない死体にそう告げると、カガリは闇に溶け込んでいった。
そして、彼女は襲われる…ある…男によって…弟がそれに気づくのは…いつなのだろうね…
第2話 輝く月がその横顔を捉える に続く
やばい…ハードル高い…
