こんにちは。日に日に暑くなっていきますね。

京都駅は相変わらずの人混みです。



今回は、タイトルの通り「外航船航海士の転職先」について書いてみます。



前の記事で、「陸上勤務の良さを経験すると退職者が増える」とご紹介しました。

https://ameblo.jp/3rdofficer/entry-12850906420.html



ところで、航海士経験者はどういう業界に転職するのでしょうか?


これは本人の好みによるところも大きいので、本当に人それぞれなのですが、人気の転職先としては、やはり船乗り経験を生かせる「水先人」が有名どころです。



一般には馴染みのない水先人ですが、船乗り達は「パイロット」と呼ぶことが多いです。そう、飛行機のパイロットは、元々船乗り用語であるパイロット=水先人からきています。「水先案内人」と呼ばれることもありますが、法律では「水先人」と書かれるので、船乗り界隈では「水先人」の方がやはり一般的です。



さて、船のパイロットとはどういう職業なのでしょうか?すごく分かりやすくいうと、船の出入港の操船を船長さんに代わってやってくれる人です。港によって、交通法規や潮の流れなどが異なるため、「ご当地のプロ」にサポートしてもらうのです。外国の港に入る時は、外国人のパイロットが乗ってくることになります。



さて、一番難しい離着岸操船をパイロット任せとなると、船長さんの存在意義が問われますが、パイロットのミスで何かあっても責任は船長さんが負いますということです。実際の現場では、パイロットさんが操船の主導権を握り、船長さんはよっぽどのことがない限り、それを追認します。



ところで、この水先人ですが、以前は船長経験者しかなれませんでした。ところが、船会社を定年退職した船長経験者となると、60手前です。しかし、水先人会というところに就職すると、そこでは最も若手ということになります(笑) 

なぜなら、水先人の定年は、72歳程度だからです。



組織の多様性・若返りという観点から、船長になっていない航海士経験者であっても応募出来ることになり、航海士の転職先としては人気なのです。といっても、いきなり船長経験者と同じ全長300mクラスの超大型船の出入港を担当出来るわけではなく、全長100m程度の中型船で経験を積み、徐々に大型船も扱えるようにステップアップするという育成スキームです。


https://www.pilot.or.jp/pilot/career.html



水先人は、船乗りと違い、出入港のみが業務ですので、それが終われば陸に戻れることになります。

これは船員の「離家族性 = 業務のために長期間家族と会えないこと」は問題にならず、大きな利点であると思います。



私の同期でも、体調上の理由で長期間の乗船が身体に合わず、水先人に転職した人もいます。

それ以外の職種では、コンサル・IT企業・船級協会(船の定期検査を担当する会社)に転職していった同期・先輩がいます。



変わったところでは、内航の大型旅客フェリーの航海士に転職していった後輩がいます。理由は、「外航船は他船を避けたりする操船の機会が圧倒的に少なくて面白くない」とのことでしたが、これには私も納得してしまいました!



船の運転をしてみたくて入社したのに期待はずれだったのでしょう。このブログでも何度か話題にしていますが、外航船航海士の実際の業務は、意外にもPC業務がメインです。周りは海に囲まれているものの、これではサラリーマンと同じです。



そんな彼も、船舶交通の多い瀬戸内海を巧みに切り抜け、今日も安全運航に努めていることと思います。