こんにちは。

 

 

前の記事 航海士の免許は船の種類別で分かれてる? | 外航貨物船の自社養成航海士による徒然日記 (ameblo.jp) で、一等航海士になると決められた船種に固定されるということを書きました。

 

 

石油タンカーやLNG船のコースに進むと、その船ばかり乗船することになります。お客さんである電力・ガス会社からの要求で、LNG船で船長をするためには、一等航海士で2年以上の乗船経験が必要といった基準があるため、一旦コースが決まると、なかなか他の船には乗れません。

 

 

世界各地を巡るコンテナ船や自動車船と異なり、タンカーは日本と中東・オーストラリアとの往復となります。

以前ご一緒したLNG船のある船長さんは、「外航船員なのにスエズ運河もパナマ運河も通ったことがない」とぼやいていました。

ちなみに私はコンテナ船に乗った時に、パナマ運河もスエズ運河も通挟を経験しました。こればかりはどの船に乗るかの運ですね!

 

 

会社の採用説明会では「世界各地にタダで行けます!」と言っているのかもしれませんが、外航船員を目指す学生の方は必ずしもそうとは限らないと頭に入れておくと、入社後のギャップが少ないかもしれません。

 

 

ところで、LNG船コースに進むかコンテナ船コースに進むかは会社が決めますが、部下として先輩の一等航海士を見た場合、LNG船の人は ①緻密 ②数字に強い、コンテナ船の人は①押しが強い ②体力がある 特徴があると感じました。

 

 

理由は下記に解説します。

 

LNG船は、半年に一度外部の検査員が乗り込んできて、船内の書類・整備状況をくまく監査するイベントがあります。この監査での指摘事項が少ないと、お客さんである日本の電力・ガス会社の人も安心です。一つでもしょうもない指摘事項を減らすため、日頃からミスなく書類仕事をこなす(=部下の書類を監督する)人が多いのです。

また液体貨物であるLNGの荷役では、管内流速の計算が必要なこともあり、緻密さが求められます。

 

 

コンテナ船の場合は荷役が陸側のクレーンによって行われるので、LNG船に比べると、船側でやることはあまりありません。予定通り、コンテナの上げ下ろしが行われているかを見守るくらいです。

 

↑コンテナの上げ下ろしは夜間も行われます。ロサンゼルスは港湾組合が強く夜間荷役はしません。滞在時間が延びるので、船員も上陸出来てハッピーです!

 

 

横浜・神戸といった日本の港は、熟練のクレーンオペレーターが操作するため、心配はいりません。ところがクレーン操作が荒っぽい外国の港で、もし船の設備に損傷が生じた場合、責任の所在を明確にするために港の担当者と交渉する必要があります。そうした場合の交渉力が必要になってきます。

 

 

LNG船の場合、作業手順がとても細かく決まっているため、その場で交渉ということはあまり起きません。懸念事項があれば、電話で陸の担当者に確認するといった程度です。

 

 

また、一港積み・一港揚げが基本のLNG船と違い、コンテナ船は1週間にいくつもの港に入港します。例えばヨーロッパだと、イギリス→フランス→ドイツ→オランダ→ベルギーを巡ります。不規則な時間の入出港が続くので、体力勝負の面もあります。もっとも、忙しさという点でいえば、一日に複数回出入港を繰り返す内航船には遠く及びません