恋のファインマンダイヤグラムの解説 | ただ生きとくだけで

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本名をもじってブログのタイトルにしてみた




恋のファインマンダイヤグラム、意味がわからないとのコメントをいただいたのでことで、解説します。






ただ生きとくだけで-F1

























ファインマンダイヤグラムというのは、素粒子の反応の過程を表わしていてます。ざっくり言うと、直線で書いたのが、粒子に対応していて、矢印は粒子が走ってきてるという意味です。

例えば一番右上は、二つの粒子が左から走ってきて衝突して跳ね返っていったイメージです。それはつまり、女子と男子の反応です。

従来の物理学では粒子の衝突だから例えばそれは電子、陽子とかになるわけですが、



電子、陽子 を

男子、女子



とおきかえることによる、ファインマンダイヤグラムの恋愛関係への理論的拡張の可能性を指摘したかったわけです。精子、卵子、双子も「子」で終わっています。日本語版の左下に示したように、アイドル的女子へのアプローチに関しても、教師、上司、医師、全部「し」で終わるという規則性が見られます。





英語だと、electron, ion, proton, neutronというように粒子の「子」は"-on"なのですが、he-onとshe-onとしてみると、neonと同じ発音でいける可能性があります。また、typicalな恋愛上の反応過程であるcrush on, rejection, spermion, embryionといった現象をみてみても、"on"で終わることが多いこともわかります。spermionのほうは、名前からしてフェルミオン(物質粒子という意味)のはずです。





あと、粒子の衝突といってもダイアグラムの上では粒子同士は直接くっつくことはなくて、波線でつながっているのが衝突(あるいは反応、力のやりとりともいえる)を表しています。ファインマンダイアグラムで波線で描いたのは、光子(=光の最小単位の粒)に対応していて、物質の粒子同士が光子をキャッチボールして力をおよぼしあっているのを表してます。

衝突というのは要するに力をおよぼしあうことに他なりませんが、粒子同士の力とは何かというと、この場合つまりは電磁気の力をおよぼしあうことです。電磁気の力を人間くらいのサイズでみると、静電気を持った下敷きが髪の毛をひっぱったり磁石の棒がひっぱりあったりする現象になります。磁石のまわりに砂鉄が模様を作るように、電気が自分のまわりに電磁場を作って、他のものに力をおよぼすんですが、素粒子のようなスーパーミクロなとこまでよく見ると、この電場とか磁場とかが実は数えられる最小単位の集まりでできていることがわかります。つまり電磁場(光)が粒子のように数えられて、これは光の粒なので「光子」と言われます。電気を持った粒子同士が反応する(力をお互いにおよぼしあうやりとりをする)というのは、この光子を粒子同士がキャッチボールするということです。人間同士でも、重い荷物を投げると、反動で後ろによろめいたり、投げつけられると後ろにのけぞったりするように、離れている人同士でもキャッチボールすれば実質的に押し合うことができるのとまったく同じです。


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一番右上

Pというのは物理では運動量を表す時につかわれる文字で、これは要するに恋のベクトルが一方だけ圧倒的に強かったという残念なことを不等式であらわしています。



二段目左

トムハンクスの映画天使と悪魔とかでもでてきましたが、物理では、反物質という、すべての物質の裏の、反物質というものが存在しています。例えば電子の反物質は陽電子とかpositronとか言われます。物質とその反物質はフュージョンして、一つの光になります。逆に、光が物質と反物質の対に分かれます。ちょうど、神様とピッコロがわかれたけど、また一人になったように、光は二つの物質に、二つの物質は一粒の光に変わるわけです。(この宇宙からは反物質はほとんど消えてしまったので僕たちの体が街中で反物質とぶつかって光になって夜空のお星さまに消えていくということはないです)



一番右下

これは双子ができる過程をあらわしてます。精子と卵子が衝突して一つになったあと、スプリットして双子になるという図です。Spermionというのは、(光子など力を伝える粒子ではなく電子などの)物質粒子を表すFermion(フェルミオン)の一種です。フェルミオンはパウリ排他律とかPauli exclusion principleという同一の軌道に一個しか入れないという法則があって、中学の化学でならう、周期表を見ていくと電子が原子核を回る軌道に内側から順番に入って占有していくというあれもその法則の現れです。ちょうど、一個目の精子が卵子に入った瞬間に、膜ができてほかのが入れないというよく知られた現象は、このパウリ排他律の拡張だと思われます。英語版のEggs Bosonは、今、CernのLHCで発見され世紀の大発見とか言われているHiggs Bosonの一種(かも知れません)。



三段目右

物理の大問題とされてきたこととして、「自己エネルギーの発散問題」というのがあります。これは、電子が一個そこにあるだけで、電子が光子を放出して、それをまた自分で受け取って、また放出して、自分で受け取って。。。とかやってることが理論的には可能だけど、ここから素直に計算してみると電子のエネルギーが無限大になっちゃって、粒子が身動き一つ取れないことになる、現実と合わない、という問題です。つまり、自分で自分に力をおよぼして、そのうち自分のエネルギーが無限大になって、身動きとれないという。この問題を電磁気に関して解決したのが朝永振一郎やファインマンで、朝永振一郎はこれをくりこみ、と名付け、英語ではrenormalizationと呼ばれています。このくりこみを適用することで、実験の予測ができるようにできることを理論のくりこみ可能性というのですが、このくりこみ可能性がのちに物理学の原理にまで高められて、電磁力以外の核力などでも成功したのですが、現在、重力だけは適用できていない。それがよく「相対論と量子論の矛盾」とか「アインシュタインの夢」とか「超ひも理論による解決」とかいうやつです。とにかく、この「くりこみ不可」というのが現代物理の大問題となっているわけですが、この図では彼女ができない男の孤独な苦悩が、もうくりこみ可能性もないほど大変な状況になっていることとして理解できることを示しています。



くりこみとか繰りこみ群の考えの基本は、力の作用の大きさが、システムを見るスケールを変えたときに違って見えることを仮定することにあります。電磁気学のくりこみは、電子が光子と力をやりとりする大きさを決める物理定数が、見るスケールによってうまく変わることによってなされます。彼女がいない男の悩みも、すこし自分の人生を長い目でみてみれば、とるに足らないことだと気づいて、自分で自分を傷つけるような思考に精神的にやられる度合いが減る、つまりくりこみが適応でき、身動きができるようになると考えられますが、具体的なくりこみの適用法は今後の研究課題です。




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英語版二段目右

spontaneous symmetry breakingというのは、日本語では自発的対称性のやぶれといって、南部陽一郎のうちたてた現代物理の基礎概念のひとつです。これはどういう意味かというと、ざっくり言うと右でも左でもよかったはずのものが、どちらかが選ばれてそっちに決まってしまうことです。例えば、時計というのはみんな右回りを使ってますが、これは歴史の偶然かも知れません。左回りの時計を使う世界になってても不思議はありません。宇宙に反物質がほとんどないのもこの自発的対称性のやぶれの現れと言われています。