TBS NEWS DIG

今や必需品となっているモバイルバッテリーについてです。今発売されているモバイルバッテリーについている「はず」なのがPSEマーク。これは安全検査を行った証なのですが、この検査自体を偽装するといった粗悪品が出回っています。その実態です。

【実態のない“モバイルバッテリー業者”】「もう今はいないですよ」代表者の転居や“実在しない住所”が発覚【写真で見る】

 

「まぶしい炎が目の前に」一歩間違えれば、命の危険 モバイルバッテリー火災

一歩間違えれば、命を落としていたかもしれません。男性が見せてくれたのは、焼け焦げた「モバイルバッテリー」です。

都内在住の男性(30代)
「寝ている間に突然燃えたバッテリーと、巻き込まれたバッテリーですね」

2026年3月、男性は突然の大きな音に目を覚ましたと言います。

 

男性
「ずいぶんうるさいなと思って、振り返ってアイマスクを取ったら、まぶしい炎が目の前にあった」

枕元に置いていたモバイルバッテリーから出火。すぐに消し止めましたが、指をやけどしたほか、部屋のカーテンなどが燃えたということです。

男性
「本当に真横で、布団で寝ていたので、それが燃えやすい材質だったら僕も大やけどというか、下手すると死んでたかもしれない」

男性はメーカーと話し合い、納得のいく補償が得られたと言いますが、中には連絡すら取れない業者もあります。

増加するモバイルバッテリーによる火災 実在しない業者も…

2025年の1年間で482件と、年々、モバイルバッテリーによる火災が増加しています。

 

国は2025年からモバイルバッテリーなどを扱う業者のうち、電話やメールで連絡の取れない業者を公表しています。

一体、どんな業者なのか。私たちは登記簿をもとに、公表されたリストに載る32社すべてを訪ねました。

記者
「たぶんあのマンションです」
「住んでいる気配がない」

別の業者を訪ねると…

記者
「〇〇合同会社。この301号室になっているんですけど」

 

物件のオーナー
「出国したよ。前ここにいたけど、もう今はいないですよ。どこに出国したか分からない」

また別の会社は…

記者
「おそらく空き店舗になっています」
「この〇〇って会社を探しに来たんですけど」

清掃業者
「〇〇会社?もうずっとここは空いてた」

代表者が転居していたり、登記の住所が実在していなかったりと、実態と異なる業者が少なくとも10社あることが分かりました。

「この薄さでこの容量はありえない」販売業者が語る“容量偽装”の実態

こうした業者のバッテリーを仕入れて、販売している会社に接触してみました。

販売業者
「特にこういう40000mAhとかの大きいバッテリーになると、実際の容量とかなり違うのが実態かな」

販売業者が語ったのは容量の偽装でした。誇大広告のバッテリーは多く出回っていて、実際の容量は記載よりはるかに小さいといいます。

Q.御社の製品はぶっちゃけたところどうなんですか?

販売業者
「この薄さでこの容量は多分ありえない」

Q.(容量偽装は)違法だという認識はあるか?
「グレーゾーンじゃないですか。黒に近いのかなと思うこともありますけど」

検査機関で判明した“偽装” 中には容量が10分の1程度の製品も

そこで、国が公表した業者の製品や、容量偽装の指摘が多かったバッテリーを購入し、民間の検査機関に持ち込みました。

 

OKIエンジニアリング解析グループ 小岩賢太郎さん
「意図的にやっているかは弊社では判断がつかないが、かなり多い数字を書いている印象」

6つの製品のうち5つで、表示よりも実際の容量が大幅に小さく、中には10分の1程度しかないものもありました。

国は電化製品に対し、安全基準を満たしたことを示す「PSEマーク」と、事業者名を表示するよう義務付けています。

それにもかかわらず、なぜ粗悪品が出回っているのでしょうか。

 

偽PSEマークも横行 2種類ある「PSEマーク」の違い

藤森祥平キャスター:
日本の電気用品の安全基準を満たすことを示す「PSEマーク」。2019年からモバイルバッテリーへの表示が義務化されました。この「PSEマーク」には2種類あるということですね。

CBCテレビ 越智駿平 記者:
多くの電化製品についている「PSEマーク」は、大まかに“特に注意が必要なもの”かどうかで分けられています。

延長コードのような、長時間人の目に触れない場所で使われるようなもの、あるいは、電気マッサージ器のような、人体に直接触れるようなものに関しては、ひし形のPSEマーク。

それ以外、掃除機やモバイルバッテリーなど7割以上の電気用品については、丸形のPSEマークがついています。

藤森祥平キャスター:
安全基準の検査は、どのようになされているのでしょうか?

CBCテレビ 越智 記者:
「ひし形」に関しては、国が認めた第三者機関による検査が義務付けられています。
一方で丸形については、その検査が必要なく、言ってしまえば自主検査だけでマークをつけることができます。

ただ、当然、自主検査にも費用がかかるため、そうした費用を削減しようと“検査をしたふり”の偽PSEマークが横行してしまうのではないかと、取材した代行業者は話していました。

小説家 真山仁さん:
よく売れる物の粗悪品が出てきてしまうのは仕方ないことですが、日本は本当に大変なことが起きるまで「安く買いたい」という安全意識のように感じます。

そもそもマークが2種類あることもおかしいと思います。費用がかかっても安全を担保するために、厳しく規制すべきなのではないでしょうか。

 

CBCテレビ 越智 記者:
モバイルバッテリーも、“特に注意が必要”なひし形にすべきだという意見もありました。

しかし、そもそも「PSEマーク」が、国がお墨付きを与えるというよりも、民間の自主的な取り組みを推進する枠組みです。

そのため、悪意を持ってしまえば、ひし形のPSEですら第三者機関の検査を受けたふりをした偽物が出回る可能性があるというのが現状なのかなと思います。

会社の実態なく…取り締まりに課題 安全な「モバイルバッテリー」どう見極める?

小川彩佳キャスター:
取り締まることはできないのですか?

CBCテレビ 越智 記者:
経済産業省は毎年、市場に出回る製品の“抜き打ち検査”のようなことをしていて、不適切な製品に関しては指導を行ったり、立ち入りを行ったりしています。

しかし、今回取材したように指導しようにも実態がない会社が複数あるというのが、取り締まりを難しくしている背景にあると感じます。

藤森キャスター:
現状、私たちはどう見極めればいいですか。

CBCテレビ 越智 記者:
今回、容量偽装の疑いが指摘された製品を見ましたが、外観だけで見極めることは難しいと感じました。それは代行業者も同じように指摘をしています。

一方で検査には費用がかかりますから、“極端に安い製品”に関しては、疑いの目で見た方がいいでしょう。

 

さらに「PSEマーク」の隣には会社の名前が必ず書かれていますので、その会社が信頼できる業者なのかというところまでチェックするのが、一つの対策になると思います。

==========
<プロフィール>
越智駿平
CBCテレビ記者 愛知県警や名古屋市政キャップ歴任
2025年12月から「粗悪モバイルバッテリーの実態」を取材

動画・画像が表示されない場合はこちら

TBS NEWS DIG