日本赤十字社医療センターの臨床心理士、関真由美さん=日本赤十字社提供

 新年度が始まりました。小中高校や大学など各学校では、マスクの着用を求めないことが基本となるなど、コロナ禍のもとで続いてきた制限が緩和されます。入学やクラス替えなどで環境が激変するこの時期、子どもたちの心はどんな状況にあるのか、周囲はどんな注意を払うべきなのか。日本赤十字社医療センターの臨床心理士、関真由美さんに聞きました。

 

 ――学校の活動制限は、すでになくなりつつあります。今、子どもや若者の心はどんな状況ですか。

 

 日本赤十字社が2月に高校生や大学生ら600人に実施した調査では、「友人や知人と対面で会う機会が増えた」「外出する人がたくさんいる繁華街にでかけることが増えた」といった回答が多く、3人に1人の若者が対面でのコミュニケーションの機会が増えたと感じていることがわかりました。

 

 ただ、「何もしたくなくなる、無気力」が高校生で39%、大学生で34%、「悲しい気持ちになる、涙が止まらなくなる」も高校生で24%、大学生で22%に上るなど、注意が必要な状況にあります。

 

■「生身の自分受け入れられるか」 不安や怖さ

 

 ――制限が緩和されるなかで悩みがあるのはなぜでしょうか。

 

 直接の交流が複雑な思いを抱かせているとみられます。まだ感染への懸念がありますし、リアルで生身の自分が受け入れられるかという不安や、マスクをしなくなることで自分を覆い隠すものなしで他者と相対する怖さもあるでしょう。大人にとっては前の生活に戻るだけでも、子どもや若者には「新しい生活に再適応していく」過程なのです。

 

 ――新年度は、入学やクラス替えといった大きな環境変化に、制限の緩和が重なります。子どもの心をめぐって心配な点は。

 

 リアルな交流への不安があること自体は自然なことで、人間関係の葛藤も、成長する貴重な機会とも言えます。ただ、新たな交流が始まるタイミングでは、互いの空気を読み合うことになりがちなことに留意が必要です。マスクをすることで同級生から「心配性」と思われたり、逆にマスクを外すと「自分の顔に自信があるね」と思われたりといった、様々なことが心配になりがちです。

 

 特に、本人に「しっかり登校し、他者と積極的に交流する」といった理想のイメージがあって、それに沿おうと頑張っているときは注意が必要です。

 

 しばらく我慢できても、いずれ疲れてしまい、心身の不調につながりかねません。5月の大型連休明けや夏休み明けなどに不登校になってしまう、といったケースも考えられます。

 

■頑張りすぎないこと大事

 

 ――新年度の頑張りすぎを避けるには。

 

 自分にとっての心地よいあり方を考えてみようと伝えたいですね。これまでは感染防止のため、人と距離をとらされ、マスクで顔を隠すことを強いられていた。

 

 これから自由度が高まるなかで、どのくらい人と距離をとるか、自分をどのくらい開示するか、試してみて、疲れたと思ったら隠したり、離れたりするとよいでしょう。

 

 その結果、仮に1人の行動が多くなったとしても、それが楽だったり、「あまりみんなと仲良くしたいわけではない」ということだったりすれば、構わないのでは。人付き合いは苦手だけど1人ぼっちは嫌だと思うなら、SNSなどの手段もあります。何が正しいかではなく、自分が心地よいと思う距離感を作り上げるのが大事だと思います。

 

関真由美さん=日本赤十字社提供