
シメの王道といえばラーメンをイメージするが……
飲んだ後の「シメ」。ダイエットや健康を考えると罪悪感に苛まれるがやめられない、魅力的なものである。また、飲食店にとっては、2軒目、3軒目の利用につながるだけでなく、ピークタイムを外した時間の集客にもなる。このように、シメは消費額向上につながるアイテムである。
今回は、昨今の“シメグルメ”事情や、あっと驚くご当地シメグルメについて紹介する。そして、このシメグルメのビジネスチャンスについて述べていきたい。
●シメのラーメンに地域差
みなさんはシメと聞いて最初に思い付くのは何であろうか。定番は麺で、特にラーメンが主流だろう。実は、「シメラーメン」には地域差がある。
博多のラーメンといえば豚骨スープに細麺。さらりとのど越しのいいものとなっている。また“替え玉文化”も、スープが覚めにくい、西日本ならではの特徴だろう。
一方、北海道はどうか。東西に約500キロ、南北に約400キロと大変広く、地域によって気候も異なる。札幌では、濃厚なみそスープによく絡む太麺を使い、濃厚な一杯をじっくり味わうのが主流だ。札幌から約140キロ離れ、真冬には気温がマイナス20度にもなる旭川では、濃厚な魚介スープにラードを浮かべ、スープを冷めにくくしているのが特徴だ。
どこを境目にするのは定かではないが、寒い場所ではみその生産が盛んになるため、やはりみそラーメンが主流になる。仙台では、仙台みそを使用したみそラーメンが主流だそうだ。
また、シメラーメンを食べる場所にも特徴がある。気候が温暖な九州では外で食べるケースが多く、博多名物の屋台が有名だ。北海道に行けば、ビルの中にラーメン街やのれん街が存在する。
●ラーメンだけじゃないシメの麺料理
また、全国各地の“シメ麺”もバラエティ豊かである。
ラーメン店よりうどん店の方が多いともいわれ、「うどん県」を名乗る讃岐うどんの聖地・香川県。ここでは、シメはうどんというケースが多いようだ。
宮崎県では、初めて食べると「湯がき過ぎ!?」と思う程やわらかい細麺うどんを、生卵を落とした甘辛い汁で食べる。この柔らかい麺は消化によいため、胃にやさしく、胃もたれしにくいように感じる。また、宮崎にはもう一つ、名物のシメ麺が存在する。前述した胃にやさしいうどんとは真逆に刺激的な1杯。“辛麺(からめん)”である。マイルドな辛さから刺激的な辛さまで、辛味はバラエティ豊かである。そば粉と小麦粉を使ったまるでこんにゃく麺のような歯ごたえのある麺に、にんにくを効かせたスープで頂く辛麺。深夜には行列ができるお店も存在するほどだ。カプサイシンの発汗効果もあり、シメをいただく罪悪感を若干消すことができるかもしれない。
そして、名古屋といえば台湾ラーメン。名古屋には、台湾ラーメンを提供するお店が200軒以上あるという指摘もある。
●あっと驚くシメグルメ
このように、全国各地でラーメンを中心としたシメ麺が話題となっているが、そのほかにもあっと驚くシメグルメがあるのでご紹介したい。
まずは、初級編である。
札幌のシメグルメといえば“シメパフェ”だ。筆者も4年ほど前、札幌で初めて体験した。“シメパフェ専門店”には夜な夜な行列ができており、中に入ると若い女性を中心に、全員がパフェをほおばっている。「飲んだ後の2軒目は、バーではないのか?」「カラオケではないのか?」――そんなふうに驚いたものである。
それにしても、なぜ、寒い北海道でパフェなのか? 生乳の生産が日本一である北海道。アイスクリームの消費量に影響があるのか? 調査をしてみた。
総務省「家計調査」の調査(2016~18年平均)によると、札幌市のアイスクリーム・シャーベットの消費額は、全国の県庁所在地や政令指定都市の中で30位。必ずしも多いといえない。しかし、さらに調査を進めると、面白いデータを発見した。
一般社団法人日本アイスクリーム協会が「アイスクリーム白書」で「気温とスイーツ、飲み物の志向」について調査していた。濃厚な味のアイスクリームは、15度くらいの時に食べたくなると回答したカスタマーが44.2%と多かった。一方、35度くらいになると24.6%と20ポイント近くダウンするのだ。気温が低いほど、濃厚なスイーツを求める傾向にあるようだ。
また「アイスクリームが食べたくなる季節・気候・環境」について調査したデータによると、外が寒くても暖房の効いた室内でアイスが食べたくなると答えているカスタマーが69%もいるのだ。いわゆる「こたつでアイス」的なニーズであろうか。
この調査を見れば、パフェのような濃厚なスイーツが北海道で人気となるのもうなずける。ちなみに先ほどの家計調査によると、アイスの消費量が最も少ないのは那覇市。あまりにも気温が高いと、炭酸飲料などさっぱりしたものや爽快感を求めるようだ。
●沖縄ではシメにステーキ
沖縄県では、シメといえばステーキ。1日中行列を作る人気店から、地場のチェーン店までステーキ店が軒を連ねる。1972年に米国から日本に返還されてから50年経っていない沖縄。いまだ米国文化が残るこの地で、独自に進化を遂げている。深夜には、現地在住者から観光客まで「それじゃ、シメにステーキ食べて帰ろうか?」と赤身のステーキをほおばるのである。
ここまでに紹介したご当地のシメグルメについて、一度は耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。しかし、各地には「ご当地グルメ」とは言い難いが、人気のシメグルメが存在する。
例えば、金沢には「やっほー茶漬け」と呼ばれる世にも不思議な店がある。お茶漬け専門店なのだが、入店、食事の前後、退店まで、店主もお客さんも「やっほー」としか口にしてはいけないのだ。「お茶漬けください→やっほー」「お待たせしました→やっほー」「おかわり→やっほー」といった具合だ。正式な店名は「志なの」だが、「やっほー茶漬け」として名を馳せている。
その他にも、高知の屋台ギョーザや六本木のかき氷など、「なぜここでこのメニューが!?」と驚くシメグルメが存在する。
●ご当地シメグルメがブームとなる背景
さて、さまざまなご当地シメグルメを紹介したが、もともと1店舗だけで提供されていたシメグルメがご当地グルメ化され、東京に進出したり、全国区で展開されたりするケースがある。このメカニズムとブームとなるセオリーを、北海道のシメパフェを事例に解説したい。
札幌で夜な夜な行列ができるシメパフェの草分け的存在といっても過言ではない「夜パフェ専門店 パフェテリア ベル」が2017年に東京・渋谷に開業した。そして、シメパフェ専門店だけでなく、深夜まで営業している銀座の老舗喫茶店のパフェにも注目が集まっており、東京でもちょっとした“シメパフェブーム”が起こっている。
このように、ご当地グルメが拡散される要素はなんなのだろうか?
まず必要なのは、なんといっても話題性のあるお店の登場だ。夜パフェ専門店とはなんともキャッチーな業態名である。カフェでもない、スイーツショップでもない。しかも、パフェ専門店でもなく、夜パフェなのである。ここには人気店となる重要な要素が3つ含まれている。
1つ目は、専門店化だ。競争の激しい飲食業界にとって、一点特化の専門店は「勝ち筋」の1つだ。そして2つ目に、ターゲットとシーンの明確化がある。お酒を飲んだ後の2軒目に、シメとしてのシーンで、バーでもカラオケでもなく「お茶をする」カスタマー層を取り込んだ。3つ目の要素は、ギャップや驚きだ。「なぜ寒い北海道でパフェ?」「なぜ深夜にパフェ?」といったギャップからくる驚きが、見た目だけではない「映える」要素として、SNSでも拡散されていったのだ。
1店だけの繁盛店がご当地グルメにまで昇華するメカニズムはどうか。これは、「まねる」ことだ。近隣の飲食店が、行列のできる人気店のメニューをまねることで、人気メニューを提供するお店が増え、ご当地グルメとなっていくのだ。
一方で注意も必要である。地域の気候、歴史、習慣などとの関連性が薄いものはご当地グルメになりにくい。北海道のシメパフェについては、生乳の生産量が多く、ミルクやアイスとの親和性が高いとともに、寒い地域ほど室内を温かくしているため、シメパフェが北海道のご当地グルメとなる条件を満たしているのである。
●なぜ東京進出できるのか
次に、ご当地グルメが東京進出を果たしたり、全国区で展開されたりするメカニズムを解析する。
食のブームは、旅先の人気ランキングと親和性が高いと言われる。空前のブームを起こしたタピオカ。こちらは台湾ブームがその背景にあると分析されている。海外旅行に関する調査研究機関「エイビーロード・リサーチ・センター」の調査(2018年に海外旅行に行った日本人男女5398人を対象に実施)では、「行った・行きたい渡航先」ランキングにおいて5年連続で1位を獲得している。
北海道は、旅行情報サービス『じゃらん』の「人気の旅行先ランキング」でも常に上位(2019年は1位)に入っている。
さらに、「旅先で求めるもの」との親和性も重要だ。北海道を旅する人のニーズは「美味しいものを食べたい」。うまいものを求め、食べ歩きした結果、ご当地グルメに出会い、旅を終えても「また食べたい!」となるのだ。
●ビジネスチャンスにつなげるには?
このように、シメグルメマーケットは、消費者の2軒目、3軒目の利用を促し、消費拡大につながる。飲食店にとってピークタイムを外した時間の集客にもなり、大変美味しいマーケットである。そのマーケットを獲得し、ビジネスチャンスにつなげるための3つのポイントを、整理したいと思う。
1、その地域の文化、習慣に沿ったストーリー性のあるご当地シメをつくる
2、一点特化
3、話題性、ギャップのあるメニュー
シメグルメを食べるのは、基本的にお酒を飲んだ後となるため、気持ちが大らかになっていることが多いと思われる。“軽いノリ“で「あのお店行ってみる?」と言えるような話題性のあるお店が注目を集めるのではないだろうか?
今後のシメグルメの進化について、個人的な見解を最後に述べる。
新型コロナウイルスの感染拡大で、今、外食業界は窮地に立たされている。しかし、長期的に見ると、温かい日が多くなり、夜の消費行動は増加するのではないか。また、現在、国内で主流のシメグルメは、日本の食文化に通ずるものが多い。世界のシメグルメマーケットがどのようになっているのかも興味深い。まだまだ将来性のあるシメグルメマーケット。グローバル化するカスタマーを捉えながら、業態開発、商品開発することは重要ではないだろうか? とひそかに考えている。
