こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Intestinal hepcidin overexpression promotes iron deficiency and counteracts iron overload via DMT1 downregulation 

Marion Felabregue et al. 

Blood (2025) 146 (24): 2863–2869.

https://doi.org/10.1182/blood.2025028370

 

ヘプシジンは肝臓で作られる「体内の鉄を減らす方向に作用する」ホルモンです。

しかし最近の報告では肝臓以外(腸管など)でヘプシジンが産生されていることがわかってきました。

この論文は、腸管でヘプシジンを過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、腸管ヘプシジンの機能を探ってみたという報告です。

 

・腸管ヘプシジン過剰発現マウスは月齢1ヶ月でひどい鉄欠乏性貧血になった。鉄欠乏への反応として、肝臓のヘプシジンが著明に低下した。

・腸管ヘプシジンは腸管フェロポルチン(マクロファージではフェロポルチンを介して鉄の放出が抑制される)は減らさず、腸管細胞のdivalent metal transporter(DMT1)タンパク産生を減らしていることがわかった。鉄の腸管からの吸収も減らしていた。

 

・腸管ヘプシジンが腸管からの供給過剰による鉄過剰症を予防することを示すために、筆者らは腸管内でヘプシジンを産生する組み替え乳酸菌(recLAB)を作成した。

・このrecLABにより、十二指腸のDMT1は速やかに低下し、ヘモクロマトーシスのマウスモデルを鉄過剰から守ることに成功した。

 

→これらのデータにより、腸管のヘプシジンは、腸管細胞におけるDMT1を介して全身の鉄ホメオスターシスを調節していることがわかった。鉄代謝異常や血液疾患への治療の糸口になるかもしれない。

 

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ヘプシジンといえは、血液内科医が専門医試験のときに覚えるものの以後使うことなく忘れることで有名なホルモンです(言い過ぎ)。

なんかこうふわっと「腸管の鉄吸収に関与するらしい」くらいしか覚えていなかったのですが、どう具体的に鉄代謝に関わってくるのか少しずつ解明されてきていようです。

 

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おまけ画像

街でみかけたムーミンの像です。今年はやたらムーミングッズを見かけるなと思ってたのですが、ムーミン80周年なんですね。

 

 

こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

TCA cycle mode switch determines the fate of pirtobrutinib-tolerant persister cells in mantle cell lymphoma

Wei Wang et al. 

Blood (2025) 146 (21): 2544–2560.

https://doi.org/10.1182/blood.2024026919

 

マントル細胞リンパ腫に対してBTKiは効果があります。

ただ、使用しているうちにBTKi耐性になってくるのも不可避と言われています。

 

腫瘍細胞は一過性の薬剤耐性状態(frug-tolerant persister(DTP))を経て、恒常的な耐性を獲得するとされていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。

 

この論文はマントル細胞リンパ腫がBTKiであるピルトブルチニブへの耐性をどのように得ていくかを、キセノグラフトモデルおよびin vitroモデルを使用して調べた報告です。

 

・治療中、マントル細胞リンパ腫は大きな細胞(giant cell)に変化し、脱増殖・脱分化状態に至る。この状態はリンゴ酸-アスパラ酸シャトルと活性化TCAサイクルに生合成を依存している。

・薬剤を除去すると、TCAサイクルは好気性代謝へと変化し、giant cellは通常サイズの細胞へと分化する。

・この移行過程ではコエンザイムAが細胞の幹細胞性を調節している。

 

→このモデルで、マントル細胞リンパ腫におけるBTKi耐性が、ダイナミックな代謝変化を伴ったDTP状態(giant cell)を経て起こることがわかった。BTKi耐性を克服するにはgiant cellをターゲットにすると良いかもしれない。

 

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代謝らへんの解析が難しくて「読むのがつらい・・・」と後半を流し読みしてしまったのですが、他のがんにおいてもがんと通常細胞とでは代謝経路が違うという話があるので、「がん細胞の見た目と代謝と薬剤耐性がつながっているらしい」・・・ということを理解しておけば良いのかな、と自分に甘い判断をしました。

 

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おまけ画像:友人とアフタヌーンティーに行ってきました。

美味しかったのですが、途中からしょっぱいものが恋しかったので、

3段ともに塩分系のアフタヌーンティーがあったら行ってみたいです。

(お茶には合わないかもしれませんが)

 

今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Older matched sibling donor vs young haploidentical donor for older patients with acute myeloid leukemia

Xavier Poire et al.

Blood Adv (2025) 9 (20): 5192–5200.

https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2024015582

 

ハプロ移植が普及したため、造血器移植のドナーを選ぶ上で「兄弟(同胞)からのHLA一致移植と子供からのハプロ移植はどちらが良いんだろう?」という悩みを持つことがたまにあります(ハプロがなかった時代からするとなんて恵まれた悩みなんだ!という感じですが)。

 

患者さんが比較的高齢の場合、その同胞も比較的高齢になりますが、一般的にドナー年齢は若い方が予後が良いとされていますので、それならHLA一致高齢同胞ドナーよりは、若い子供からのハプロ移植の方が予後が良いのでは・・・?という疑問が湧いてくるわけです。

 

この論文はヨーロッパの造血幹細胞移植データベースを使用し、60歳以上のAMLで、CR1で骨髄移植を受けた人のうち、50歳以上のHLA一致同胞ドナーあるいは40歳以下のハプロドナーからの移植を受けた人を抜き出して後方視的に解析した報告です。

 

GVHD予防として、同胞移植ではin vivo T-cell depletion(ATGかアレムツズマブ)、ハプロ移植ではpost CYが使われていました。

 

結果

・全部で1247人が解析対象となり、721人がフルマッチ同胞ドナー、526人がハプロドナーだった。

・単変量解析では、ハプロドナーで再発が少なかったが(p=0.01)、非再発死亡が多かった(p=0.01)。

・全体の2年間のOSは62.5%、白血病非再発生存率(LFS)は56%、無GVHDかつ非再発生存率(GRFS)は47%だった。

・多変量解析でも単変量解析と同様、ハプロドナーでは再発が少ない一方で非再発死亡率が高く、結果として両群のOS、LFS、GRFSは変わらなかった。

 

結論

・このCR1のAMLへの移植に関する後方視的研究では、高齢のフルマッチドナーと比較して若年のハプロドナーでは、再発は少ないものの非再発死亡が多かった。

 

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この論文のリミテーションとしては、後方視的な解析であるため、GVHD予防の方法や末梢血幹細胞か否かなどが大きく違っていることです(ハプロドナーでは末梢血幹細胞移植が少なかったのですが、一応多変量解析では末梢血幹細胞かどうかは考慮に入れられています)。

特にGVHD予防がpost CYかどうかは、ハプロ移植でなくてもpost CYが良いのは?という報告が近年出てきていることから、今後検討の予定がありそうです(多変量解析でも考慮に入れられていません)。

 

とはいえ、ハプロドナーと同胞HLA一致ドナーとで生存率が大きくは変わらないという報告は、ドナー候補を増やすという意味で心強いことだと思いました。

 

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おまけ画像:日田の素敵な喫茶店でいただいたガレットです。