こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Ferric carboxymaltose increases fracture risk in patients and reduces bone formation in mice with iron deficiency anemia

Sonja A. Wagner et al. Blood (2026) 148 (1): 15–30.

https://doi.org/10.1182/blood.2025031806

 

鉄の静注製剤は、内服で鉄欠乏性貧血が改善しない患者さんにとって有用なお薬です。その中でもFerric carboxymaltose(FCM 商品名:フェインジェクトなど)は広く使用されていますが、低リン血症を多くの患者さんで起こします。また、FCMを繰り返し投与された場合、骨軟化症や骨折が増えることがケースシリーズレベルで報告されています(これらの症例では低リン血症を引き起こすintact fibroblast growth factor 23(iFGF23)が上昇していました)。

一方で、ferric derisomaltose(FDI 商品名:モノヴァーなど)はほとんど低リン血症を起こさず、それがなぜなのかはわかっていませんでした。

 

この報告は、FCMとFDIの骨折リスクへの影響を調査し(前半)、その違いがどこから来るのか調べてみた(後半)という論文です。

 

(前半)

方法:357人のFCMかFDIを投与されたコホートを元に、骨折リスクおよび骨軟化症リスクを評価した。

結果:FCMを投与された群ではFDIと比べ明らかに骨折および骨軟化症が増加した。この結果は、TriNetXという20000人以上の患者を含んだ別のデータベースでも同様だった。

 

(後半)

方法:骨折リスクが増える機序を調べるためにFCMかFDIで治療した鉄欠乏性貧血マウスモデル、骨細胞モデルを解析した。

結果:FCMはFDIと比べて骨における鉄濃度が高くなり、コラーゲンの減少や骨化遺伝子の低発現をもたらした。電子顕微鏡では、鉄を含んだ小胞が骨芽細胞と若い骨細胞で見られた。

FCMは骨細胞のαVβ3-integrinとdentin matrix protein1がくっつくのを阻害した(FDIはそうでもなかった)。

このことはFCM投与に骨形成が低下し、iFGF23が増えるメカニズムかもしれない。

 

結論:鉄欠乏性貧血とその治療のFCMは骨形成を直接的に阻害し、骨折リスクを高めることを今回のデータは示している。

 

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鉄の静注製剤と骨折を結びつけて考えたことがなかったので、新鮮な論文でした。

あまり上の文では言及できなかったのですが、鉄欠乏性貧血マウスモデルにおいて骨密度は、FCMの投与とは関係なくガクッと下がっています。鉄欠乏そのものも骨には悪いんだなあと、鉄の大事さを痛感しました(まあ鉄過剰も体に悪いので、塩梅が難しいのですが)。

 

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おまけ画像

高知県に行ってきたので、その画像をいくつか。

空港で流れてきたカツオのたたきです。サービス精神を感じる。

四万十川でSUPをして、案の定落ちる自分

SUPのお店で飼われていた猫ちゃん。こんなに触らせてもらって良いんだろうかというくらいに触らせてくれました。ありがとう。

 

高知の写真はもう少しあるので、8月のブログにも引っ張る予定です。

こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Prehospital resuscitation with type O whole blood for trauma and hemorrhage

Jason L. Sperry et al.  DOI: 10.1056/NEJMoa2602167

 

このブログとしては珍しくNEJMからの紹介です。

 

映画の「マッドマックス怒りのデスロード」では、主人公がO型Rh-の設定で、いろんな人に直接輸血をしていました。

それを見ながら自分は「全血をいれちゃって良いんか?」と勝手に心配になっていたのですが、

どうやら緊急時の対処としては大丈夫らしい。という論文です。

 

背景:外傷性出血によるショック時、病院搬送前に輸血をすることは死亡率を減らす。ただ、全血が部分輸血(赤血球・血漿・あるいは両方)と比べてメリットがあるかどうかははっきりしていなかった。また、全血輸血製剤の保存期間と予後の関係もわかっていなかった。

 

方法:この研究は臨床現場での多施設クラスターランダム化第3相試験である。44の医療空港基地を2:1で、病院到着前に最大2単位の全血輸血を行うか部分輸血を行うかでランダムに分けた(1ヶ月間)。主要評価項目はランダム化後30日内の死亡で、副次的観察研究として全血の保存期間と予後の関連も評価した。

 

結果:外傷性出血性ショック1020人の患者が航空基地により病院へ運ばれた。715人が全血輸血を受け、305人が部分輸血を受けた。うちそれぞれ695人と298人を解析に入れた。

全血輸血を受けた群の30日内の死亡率は25.9%で、部分輸血を受けた群の死亡率は20.5%だった(オッズ比 1.24 信頼区間0.87-1.76、p=0.24)。両群における有害事象に差はなかった。

副次的観察研究として、全血の保存期間と予後の間に相関はなかった。(30日内の死亡率が保存期間15-21日だった人で27.1%で、1-14日だった人が26.4%)

 

結論:出血性ショックを起こした外傷患者において、病院到着前に全血輸血をすることは部分輸血と比べて予後を増悪させない。

 

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O型の全血を入れる上で心配なのが、血漿中の抗A、抗B抗体なのですが、本研究ではそれらの抗体値が低い人の全血輸血が行われています。

「とりあえずO型の血液型を入れる」プロトコールには、何より簡便というメリットがあるので、意義のある論文だと思いました。

(その知識が活かされる事故や戦争といったシチュエーションには出くわしたくないですが・・・)

 

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おまけ画像:九州国立博物館の細見コレクション展に行ってきました。

中村芳中の鳥の屏風がとてもかわいかったです。

写真は博物館のカフェテラスで食べた金魚鉢っぽいゼリー?で、美味しかったです。

九州国立博物館の外にあるレストランは観光客向けなお値段だな〜といつも思うのですが(味は美味しいです)、

中にあるカフェテラスは良心的なお値段でオシャレタイムを過ごせるので気に入っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Immune biomarkers of increased infection risk in multiple myeloma 

Ainrzane Zabaleta et al. https://doi.org/10.1182/blood.2025031744

 

多発性骨髄腫において、感染イベントは直接死因になりうる大きなイベントです。ただ、どのような症例で感染が起こりやすいのかいまいちわかっていません。

この論文は、1786人の骨髄と末梢血を次世代フローサイトメトリーで解析し、感染になりやすいのはどんな細胞セットを持った群なのかを検証した報告です。

 

結果:

・CD27+B細胞が少ない群では有意に感染症が多かった。

・CD27-NK細胞が少ない群では有意に感染症が多かった。

・骨髄のCD27-/CD27+T細胞比が高い群でも有意に感染症が多かった。

・上記のリスクファクターは3つのデータセットで確認した。

・上記のリスクファクターが1個以下か2個以上かで分けると、感染イベントが35% vs 60%となり、有意差を持って感染しやすさの階層化ができた(これを免疫スコアとする)。

・免疫スコア、骨髄腫のステージ(MGUSかくすぶり型か新規か再発難治かという分類)、CD38-/BCMA-/GPRC5Dターゲット治療の有無が、感染症に関連する独立因子だった。

・今回の解析において、骨髄と末梢血ではすべてのタイプの細胞が相関しており、末梢血でルーチンとして感染リスクを推測できる可能性がある。

 

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多発性骨髄腫診療において、どの人が感染しやすいのか、確かによくわからないなあと思っていました。

(よく言及されるのはIgGですが、IgGが低くても感染症にならない人はならない)

次世代FCMをルーチンで流すのが現実的かというとそうでもないのですが、こういう臨床の疑問に答えるタイプの論文は割と好きです。

 

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おまけ:福岡の田川に魚楽園という雪舟が作った庭があるのですが、ここ数年ずーっと閉園しています(池のある庭愛好家としては悲しい限り!)。ただ、その庭併設のカフェは休まず営業しており、一体どんな事情があるのか気になっております(野次馬根性)。

魚楽園が閉園しているためか、カフェも閉まっていると勘違いして帰る人が多そうなので、勝手に宣伝のつもりで写真を載せておきます。運がよければ庭でダラダラするカフェの飼い猫ちゃんを眺めることができます。