床屋難民8の続き。

オレはある日の散髪時、ヤンキー姉さんに思い切って話しかけてみた。

オレ「会社帰りに店の前を通るんですけど、最近店が閉まっていることが多いですね?」

ヤンキー姉さんは無愛想に訥々と話しだした。

ヤンキー姉さん「家庭の事情で、最近どうしても店開けられなくて。」

ヤンキー姉さん「母親の具合が悪くて、病院の付き添いとか、色々ごたごたしてて。」

オレ「それは大変ですね・・・」

ヤンキー姉さん「簡単に治る病気じゃないんで、長引きそうなんですよー」

ヤンキー姉さん「店はワンオペで運営してるんで、あたしが来れないと開けらんないすよねー」

ヤンキー姉さん「コロナで客も減ったし、店もここらで潮時かなと思ってます。」

オレ「そうですか。ここ数年通っていたんで残念です。」

それでもオレは完全に閉店するまで、店の前を通り続け、開いているときは散髪を頼んだ。

ヤンキー姉さんとはあの回以外は、一切会話をしなかった。

こころなしか元気がなかった。

その数カ月後、店のシャッターは閉めっぱなしになった。

そういえば、ヤンキー姉さんの店が閉店するときも「長らくのご愛顧、ありがとうございました。」の張り紙がなかった。

徐々に肌寒くなってきた11月、オレは再び床屋難民となった。

つづく。