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この日は、やっぱり特別な心境になる。
正直、ビビッドな記憶ではなくなってきたけれど、でも、この日は特別。
あれから23年。
あの年に生まれた子が、もう23歳になるんだな。
そのことに、今更ながらに驚いた。
あの恐ろしさや悲しさは、やっぱり体験した者と体験したことのない者とでは違うはず。
それは、私たちも戦争の恐ろしさや悲しさをリアルに掴めないのと同じ。
年々、震災の記憶は薄れてはいくけれど、あの時、揺れがおさまった時にまず人間がしたことは、人間を助けたことだったということだけは忘れない。
たくさんの人が見知らぬ人を助け、暴力団が炊き出しをして人を労った。
みんなで声を掛け合って、自分にできることに一生懸命取り組んだ。
目を覆いたくなるくらい、悲しいことや辛いこともあったけれど、今はその人間が本来持っている思いやりの部分のことが一番心に残ってる。
それは唯一の救い。
あれから23年。
とにかく、時は流れた。
あの日は、雪の日のあくる日で寒い朝だった。
今朝は3月下旬のあたたかさ。
あの日とは、また違う朝だ。