繁盛店レポート | おしぼり@三協通信ウェブ版

繁盛店レポート

三協通信ウェブ版の第一回目は、佐野市の大繁盛居酒屋「ちゃこや」さんのレポートをお届けしたいと思います。

「ちゃこや」さんは、元々50年続く老舗のおすし屋さんで一時期は経営難でかなり厳しい状況でしたが、わずか数年で見事に復活を遂げました。

そのお店の3代目社長にたっぷりと、繁盛の秘訣をお聞きしました。

それでは、どうぞ!

--まず最初にお聞きしたいのですが、社長さんが、お店に入ったというのはいつ頃ですか?

自分が22歳のときなので、9年ぐらい前ですね。

--最初は、やはり苦労とかはありました?

自分が入ったときはもうバブル崩壊後で、景気も悪くて、おすし屋さんていうといくら取られるかわからないとか、がんこそうなおやじがいるとか、注文の仕方がよくわからないとかそういうイメージがあってそれで、回転寿司なんかも出来てきた時代で本当に厳しかったですね。

【すし屋からの転身】

--今みたいな業態に変えたというのは、いつぐらいでそのきっかけというのは?

2年半前です。その1年前ぐらいから計画はしていたんですけど。

当時は、お客さんが来ないからどんどんネタも悪くなるし、運転資金もなくなって仕入れも厳しくなってきて他からお金を借りてまで仕入れなきゃならないような状況になってしまったわけです。来たとしても昔からの常連のお客さんで、その方達がいなくなったときは店は終わるなというふうに思ってました。でも自分も跡継ぎとして商売やってるわけですからこのままでは絶対ダメだというのはありましたね。


--この業態に変えるときに先代の反対はなかったですか?

やっぱり多少ありましたね。何十年もやってきた名前を変えるとか。ただ父親が60歳を過ぎていて、病気もあったので、とにかくお前にまかせるしかないからという感じでわりかしスムーズにいったんですね。まだ若かったら多分こうスムーズにはいかなかったでしょうね。

--おすし屋さんから業態を変えようというときに、色々な選択肢があったと思いますがこのスタイルにしようと思ったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?

そうですね。やはり出会いがあって、○○さんという飲食店のリニューアルとかプロデュースする会社があるんですけど、そのテレビを見たんですよ。つぶれそうな老舗の割烹料理屋をリニューアルしてお店を立て直すという。その会社の社長とコンタクトを取ったんですけど、その頃は今駐車場のところによその建物が建ってたんですよ。その頃は今の建物の奥にお店があって手前が駐車場だったんですよ。で、その社長にこの状態じゃしばらくは何ともできないからこのまま頑張るしかないよっていうふうに言われたんですね。「その間に色々なところを見て勉強してきなさい」というふうに言われて、秋田に行ったりとか静岡に行ったりとかその社長が作った店を見に行ったりしていました。それで東京に串焼き屋と寿司屋をいっしょにしたものすごい繁盛したお店があってそこを見に行ったときに「これだ!」という直感で決めました。というのはすし屋さんの悩みの一つが、グループで1人でも生ものが食べれない人がいるとお店に来ない。そうすると生もの以外があったほうがお客様が入りやすいし、寿司も串焼きもつまみになりますし、その組み合わせがいいのではないかと。父親の常識から言わせると、そんな煙が立つものと生ものをいっしょに扱ってみたいな事があったんですけど、実際成功例を見ていたので。それで、そういうのをやりたいなって決まってから隣の建物をなんとか交渉して立ち退いてもらうようにしました。それで社長のゴーサインが出たんで、じゃあやろうと。


【偶然を引き寄せる力】

--その時、当然資金とか必要になったと思うんですけど銀行さんと交渉されたんですか?

そうですね。自己資金がゼロで、4000万以上の借り入れだったので、かなり厳しかったんですけど、国金さんに結局借りたんです。○○さんの実績とかそういうのを全部見せて何回も交渉しました。銀行さんにはもう2回断られたんでダメだったんですけど。たまたま、国金さんの担当の方が○○さんのお店にも行ったことがあるらしくてすごく興味を持ってくれて前向きに話をしてくれたんですよね。かなり異例だったと思いますよ。金利も一番低いときに借りられたんで。


--なるほど。そういう偶然が重なってうまくいったんですね。

そうですね。実は、前のすし屋のときにちょっとした資金ができたんで改装してみたんですよ。それで、自分なりにメニューも一から見直しましたしデザインも自分で考えて地元の工務店さんと話しながらやったんですけど、蓋を開けてみたら常連のお客さんがきれいになったねって言うぐらいで新たなお客さんを引っ張ってくるまでには至らなかったんですね。改装したのはいいけどやっぱり素人が考えるデザインってあちこちちぐはぐで、統一性がないというかメニューとか雰囲気とか全く統一性がなくてめちゃくちゃだったんですよ。その経験があるのでやっぱり小手先だけ変えてもどうしようもないなというのがわかったので、ある程度そういうところはお金はかかるけど、そういうところは、プロにまかせた方が長い目で見たら良いということで○○さんに頼むという形になりました。

--新築されたときのお店のテーマとかターゲット層は?

土地が長かったので長屋風でレトロなイメージで、ちょっと楽しそうな感じというようなテーマはありました。ターゲットは例えば、東京だとある程度層を絞って若い世代の人をターゲットにするとか、中高年とか、収入の高い人5%とか色々できるんですけど、田舎なのでとにかく色んなシーンで使えるお店にしたいというテーマがありました。デートでも使えるし、会社の飲み会でも使えるし、週末は家族でも使えるというような。難しいんですけどそれにかなうデザインにとこちらから提案しましたね。それと、元すし屋ですから入りづらいというのをなくしたいというのがあって、外から中が見えるようにしたりとか、あとは女性が来れるお店にしたかったので女性受けが良いデザインにしてもらいましたね。あと、店名も最後まで変えるか悩んではいたんですけど、やっぱり「あけみ寿司」というすしやの名前だとちょっと固いんで、新しい店に合わせて女性がデザインした可愛らしい名前にしようということで最終的に「ちゃこや」になりました。

【リニューアルオープンの鉄則】

--新築でお店を立て替えた後はずっと順調に行ったんですか?

そうですね。損益分岐点が500万だったんで500万いけば利益が出るという計算で始めたんですけど、初月が600万売れて、最初は珍しがってくるのかなと思ってたんですけど、その後580万ぐらいまで落ちて、それからは右肩上がりで、今は1000万を超えるぐらいにまでなりましたね。


--そこまで売り上がったというのは、口コミとか何かそちらから仕掛けたとかはあるんですか?

口コミもそうなんですけど、最初アンケートを取ったりとか色んな意見を聞いてそれに柔軟に対応したということですね。飲み物のメニューが少ないという意見が多かったのでメニューを増やしたりとか、そういうふうに柔軟に対応したんでそれがジワジワときたんじゃないですかね。それと、最初「サイレントオープン」といって全く宣伝はしなかったんですね。最初にどかっと来て混乱しちゃうと返ってイメージ悪くしてしまうので、慣れた頃に宣伝をし始めたのでそれが良かったと思います。


--それは、やはりそういうコンサルティング会社からの知識があったんですか?

それはありますね。普通は大々的にやっちゃうんですけど、この辺は地域性で、何かお店ができるとガーッと集まって、だいたい対応できなくて「あそこだめだ」みたいな話になって、また次のお店っていうふうになっちゃうところがあって。やはり皆さんそうするべきだと思いますね。そのぐらいの余裕を持って計画立てないと最初から売り上げなければとなってしまうと後々厳しいですね。


--この前、こちらに食事に来たんですけどこちらのお店だけですよね。繁盛しているのは。何か比較的この辺は閑散としてますもんね。

町の中はだめですね。郊外は比較的色んなお店が入ってきてますけどね。


--閑散とした町の中にわざわざやってくるというのは本当に魅力的なお店ということですよね。

逆に周りにお店がないというのも一つの強みではあるんですけどね。大手さんはみんな郊外に目がいってますからね。それで入ってこないというのも強みではありますよね。あとは、○○の社長と始めたときに商売というよりは町おこしをやろうということで始めたんですよね。町の中に一店舗どっと集まるお店を作って少しでも町の中に活気を持ってきてそれに刺激される人達が出てきて町の中が発展すれば良いだろうと。そういう商売を超えた崇高な目的というものがあったほうがいいかなと思います。

【お客様に喜ばれる教育】

--この前お店に来てアルバイトさんに「おすすめは何ですか?」と聞いたら「私はこれが好きですね」なんていう変わった対応で新鮮だったんですけど、ああいった教育はどのように?

その辺は全く教育してないんですよ。逆に教育しないのがポリシーというか、うちの場合は、個人店なんで個人店の強みというのは人間らしさとか個性があったほうが面白いので、自分が良かれと思うことは何でもやって良いからというのを基本にしていますね。だからかっことかも規制しないし、それが全く同じような格好で同じような対応されたら面白くないじゃないですか。だからある程度の最低限のマナーさえ守ってくれたらあとはいいよというのがうちのやり方なんです。


--普通に考えるとスタッフに自由にやらせるといっても勝手に変なことをしてしまうのではないかなと思うんですけど。最初の簡単な教育もやらないんですか?

最初の教育っていうのは、例えばメニューの伝票に書く書き方とかそういうのは教えますけど、あとは、基本姿勢としては、お客様第一主義なのでそこだけは決まっているんです。ようするに、そこからずれなければ良いということなんで、例えば「好きにやって良いよ」と言って「じゃあ、私今日だるいから休んでる」というのはもちろんダメなんですよ。お客さんに対してこうやれば喜ぶんじゃないかなと思ったらそれはOKということです。


--基本はピシッと押さえてるわけですね。

そうですね。そこに文章が書いてあるんですけどそれは必ず読ませてこういうことだというのは、理解させて、理解したらあとは好きでいいよということですね。


--私も知っているコンサルティングの社長さんに聞いたんですけど、お客さんが会計のときの表情を見て満足度を判断しているというふうに聞いたんですけど。

そうですね。お客さんの帰り際の顔を見て自分なりにどのぐらい満足していったかなというのを数字にして伝票のところに書いていたんですけど、それはそこで勉強したCS(顧客満足)は売上に先行するということで、それをやった意図というのは、別にそれをやったからといってCSが上がるというわけじゃないんですけど、とにかくアルバイトの子にもCSというのは何か、お客さん満足というのは何かということを落とし込みたかったからそれをやったということなんですね。とにかくお客様満足度を上げるというのが全員のテーマですね。それは、アルバイトの子でも理解してくれてると思うんですけど。


--なるほど、ミーティングとか朝礼でさっきのを読ませたりとかっていう落とし込みは行っているわけですね。

ミーティングはたまにですけね。実際問題すごく忙しくて更に年中無休でやっているのでみんなで集まったりするのが、なかなか難しい状況になってしまっているので、本当に忙しい時は仕込みぎりぎりで間に合わないぐらいのときもあるんで朝礼もできてなくてそれが課題で、今は自分が1対1で個別で話したりとか注意したりとかで何とかしのいでるという状況ですね。本当は1週間に一回ぐらいのミーティングや朝礼をやりたいんですけど、だからそこが課題ですね。

【ワクワクするお店作り】

--話は変わるんですけど、ここに呼び鈴の変わりに大きな鈴が置いてあるじゃないですか。こういったアイディアというのは、社長さんが考えられたんですか?

そうですね。ここには、置いてあるんですけどあちらの中心部は全部置いてないんですよ。目を光らせるようにということで。お客さんがちょっとメニューでも見たら何か注文が入るからチェックしとけというのが基本なので。ただここと2階というのはどうしても目が届かないんで置いてあるんです。やっぱりこのボタンじゃないっていうのがみそで、2回はデンデン太鼓が置いてあったりとか、自動ドアにしなかったのも、こう自分で開けるドキドキ感というかワクワク感というかそういう部分を大事にしてますよね。


--メニューについてお聞きしたいんですけど、メニューで何か工夫していることってありますか?

一応このグランドメニューは半年に一度変えることにしてますね。あとは、元々すし屋なので旬のものをおすすめで入れるようには努めているんですけど。そこもうちの課題ではあるんですけど。


--この前、来たとき感じたんですけど刺身が考えられないというか、普通の居酒屋さんとか高級なお店でもあれだけのネタというのは、出せないですよね。でも全面に押し出してないというのがすごいなと思うんですよね。看板メニューじゃないですか。僕もすし屋だったので黒板を用意して今日のおすすめネタを書きたくなっちゃうと思うんですけど。そういう葛藤みたいなものってありますか?

それは、やっぱりありますよね~。ただ、全く刺身なんか食べないで帰っていく人もいますしね。どうしてもおすし屋さんとか料理人って自分たちのエゴが出ちゃうじゃないですか。やっぱりお客様の好みが全てなので、生ものが好きじゃない人に刺身を出してもそれは喜ばないので、あくまでもうちは黒子ですから。あまり主張はしないというか、とにかくお客様満足はどういうことかを考えていますので。


--必ずしも、こちら側が良いと思うものがお客さんにとって良いとは限らないということですよね。

そうですね。


--ちなみに、アンケートを取ってお酒の種類を増やしたりとか、それ以外にこれをやって売上が増えたということは何かありますか?

そうですね。特に変わったことはやってないですね。こういう小手先の戦略みたいなものはないですね。ただ来たお客様を満足させて帰すということだけですよね。それの積み重ねしかないかなと思います。だから、一時だけ売上を上げても意味はないというか本当にジワジワですよね。お客様を満足させるためにはということは、やっていますけど何とかフェアをやったとかっていうのはないですね。


--今まで色々と話を聞くと、かなり勉強されていると思うんですけど、それはどのように?

やっぱり出歩くことが、多いですね。飲食店に限らず新しい施設ができればそこに行ってみたりというのはかなり心がけてますね。東京に行ったらどこか見てくるとか。


--それは、必要ですよね。

そうですね、ここにとどまっていても何にもないし、何の変化もないですから。かっこよく言っちゃうと自分の完成を磨きに行くというか刺激を受けに行くというか、この辺だと刺激がないんですよね。お客さんがどういうものを求めている傾向にあるかとかすごく興味があるんで。


--今後のビジョンとか目標を聞かせていただきたいんですけど。

飲食店というのは、すごくもろい面もあって例えばうちで食中毒でも起こしたら明日から売上がなくなるじゃないですか。そうなったときに社員たちはどうするんだというのがあるのと、今社員が自分以下4人いるんですけど、みんなアルバイトから就職してくれて結構働きたいっていう人が多いんですよね。それもありまして、この店が落ち着いたら、居酒屋以外の飲食業でお店をやって経営ももっと骨太にして何かあっても他の店舗でカバーできるという発展の仕方をしたいというのがありますね。ただ、この店をチェーン化するというのは全く考えてなくて、とにかくこの町を盛り上げるような形にしたいですね。例えば、ホテルに泊まったお客さんに「夜営業している佐野ラーメンのお店ない?」って聞かれてもないんですよ。夜遅くやっているお店は一軒もないんですよ。この近辺は。


--え、ないんですか?

ちょっと美味しいっていうところはすぐ閉まっちゃうんですよ。


--じゃあ佐野ラーメンやるんですね(笑)

いや、それはわかんないですけど、必要とされているものって絶対あると思うんですよね。


--僕もこちらで刺身とか食べさせてもらって、チェーン展開は難しいだろうなって思うんですよね。

まさにその通りです。チェーン展開できないんです。


--この個性的なお店がここにあるからこそ、ここに来てくれるということですよね。社長さんがおっしゃたように骨太にするために例えば洒落たショットバとか、夜まで営業しているラーメン屋さんがあったりとかすると面白いですよね。

まさにその流れが作りたくて、今うちに飲みに来たお客さんでも「この後カラオケ行くか」となっても代行車使って郊外まで行くんですよ。そういう流れなんですよ。みんな代行車使って転々と行くわけですよ。それだったら町の中にギュと詰め込んで歩いてみんな行けるというのが、できればもしかしたら他にもお店を出す人も出てくるかもしれないじゃないですか。そういう流れができてれば。もしかしたらこの町の中の空洞化とか景気の悪さというのを変えることができるかもしれない、自分もここで生まれ育ったので、この状況は何とかしたいというのはあります。そういう目的とかあれば必然的にお金とかが後からついてくるのではないかなと考えています。


--やっぱり業績を上げているお店というのは、社会貢献であったりとか町起こしであったりとかそういうところに目がいってますよね。

まだ全くできてないですけどね。でも一応そういう夢っていうか目標がありますね。


--最後にこれを読んでいる飲食店の方にアドバイスというかメッセージをお願いしたいんですけど。

すごく言いづらいですね。


--やっぱり業態変更して売上もここまで持ってきたというのは相当すごいことだと思うんですよね。今、厳しい状況の飲食店さんもいると思うのでぜひ。

そうですね。自分の場合は、ただ生き残りをかけてがむしゃらにやってきて、奇跡的といってもいいぐらいお店は良くはなりましたけど、○○さんで習ったことですごく共感できるというのは、「自分が源泉」という考え方で、何か自分に原因があるんじゃないかというふうに考える。景気が悪いとかここは人が通らないといってあきらめていたらずっと変わらないでいますしね。良いことも悪いこともいったん全部自分のせいとして考えてみる。考え方一つで最終的にはものすごい違いが出てくるかもしれないですよね。やっぱり入ってるお店はありますから。ただ、今はお客さんがすごくシビアで使う店を選んでる気がするんですよね。まだまだそんなに景気は良くないので、少ない中で出てきた資金をどこに使おうかっていう場合には、良いところに使いたいという傾向が今すごく強いと思うんですよ。だから一極集中しちゃうっていうかすごい格差が出てる気はしますね。

だから景気が悪いとか人のせいにしないで、そういう考え方をしてみると何か糸口が見つかるのではないかなと思います。


--なるほど。今日は貴重なお話ありがとうございました。