ゴジラと共に”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
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日本の戦後を担った先駆者たる音楽家・作曲家は数多存在すれど、これ程まで ある種 ユニークな活動に徹したコンポーザーは 何んと言っても伊福部 昭をおいて無くそうした意味では他の追随を許さない存在であった。長らく東京芸大で後進の指導に従事し黛敏郎初めその門下からは世界に冠たる優れた作曲家が数多巣立っている。そして同時に自らは交響的作品群を多く手がけ積極果敢に創作に勤しんだのである。一時期 東京音楽大学の学長として教育の最先端での活動も担ったが 退任後はもっぱら生涯に渡り創作に余念無く 先年90年余りの生涯を全うした。その伊福部 昭と言えば【東宝】が世界に誇るモンスター映画の金字塔【ゴジラ・シリーズ】の音楽を長年担当した映画音楽の巨匠でもあり 今年新たに上映された【シン・ゴジラ】でも伊福部作品は かつてのシリーズのまさにオマージュ的存在として この新作にも随時多用された事は周知の通りだ。伊福部作品に共通して言える事だが、それは実に骨格のしっかりとした骨太なサウンドだと言う事だ。例えエレガントな描写を求めても そこには 音の流れに一切軟弱さがない。実直で明快 今ここで醸し出される音楽で何を言わんとしているのか 極めてストレートに聴衆に訴えかける見事なまでのシチュエーション作り それが映画のストーリー展開と相まって 空前の調和をもたらす。実直に【美】を探求し素直に感じたままを譜面に書き連ねる。伊福部 昭は作曲法をほぼ独学で習得している。驚異的才能である。北海道の開拓民の家系出身と聞くが そうした故郷の広大な自然や息吹は やはり伊福部作品の表現思想の根源なのであろう。壮大で息をもつかせぬ程のパワーとその質感は まさに独自の世界観に根ざしている。こうした観点からもまさに日本クラシック界の至宝とも言うべき人物が伊福部 昭であった事が察せられる。そして永遠のスター【ゴジラと共に】伊福部 昭の諸作品も又、永遠不滅である。
(ルチアーナ筆。)
シンホニック・ファンタジア”
《伊福部 昭》。