フィガロの結婚” 誉れ高き名画。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」。これは ジャン・ピエール・ポネルの演出による当代きっての名作の映画版である。オーケストラはウィーン・フィル。指揮は巨匠カール・ベーム。オペラの映画版制作における これは歴史に残る最も優れた作品と言える。キャストが又 凄すぎる程豪華である事も特筆もの。全てのキャストが絶頂期にあった頃の優れた歌唱を聴く事が出来る。タイトルロールのフィガロをヘルマン・プライ、スザンナをミレルラ・フレーニ、アルマヴィーヴァ伯爵をディートリッヒ・フィッシャー・ディスカウ、伯爵夫人(ロジーナ)をキリ・テ・カナワ、ケルビーノをマリア・エーヴィンク、ドン・バジリオをヨーン ・ヴァン・ケステレン他。モーツァルトが描く最高傑作、軽快でウイットに富んだしかし実にたわいもないドタバタ喜劇 なのにここには気が付けば 作曲当時の世相を反映し極めて社会的・政治的な思考・思惑が潜む事を改めて認識されられる。【支配階級への痛烈な皮肉】モーツァルト自身はあくまでも天真爛漫、面白い題材に珠玉の音楽を付けただけであっただろう。しかしそうである事が かえってその真相をクローズアップさせる要因となる。天才の為せる技とは実に恐ろしい…いや今更ながら驚愕の極みである。では かなりの長丁場ではあるがモーツァルトの世界に身を委ね 大いにその音楽の美しさと絶妙なドラマ展開との融合の見事さを とくとご覧あれ。
(ルチアーナ筆。)
★演出の中で特徴的なのは、歌唱中その人物の内面を表現する描写では、あえて口を閉じて内面思考を表出させている事だ。勿論、歌そのものは別取りして付加していて、配役本人のものである。絶妙の演出、こうした事は実際のステージでは決して出来ない。映像だからこその巧みな手法と言えよう。