薫「奈緒~、もう遅~い!早く~~!、お腹ペコペコなんだから私!。」奈緒「ハーイ、今行きます!。ちょっと待って下さいよ~!。」薫「う~ん、待てない!もう早くってば~!。」
田代先輩のせっかちは今始まった事ではないんですけど、はっきり言って私!【あぁ~目が回りそう!】我が城東音大の学食は前にもお話したコンサートホール『ミューズ・グランド』に併設されていて安価にして豊富なメニュー、しかもボリューミーときていて学生達は勿論私も含めて、日々重宝しているんです。そんな学食へ一っ飛び、私ののんびり歩速にイライラしながら田代先輩の姿は瞬く間に学食の入口扉の中に吸い込まれる様に消えて行きます。程なく私も到着…。っと言ったって本の1、2分の差ですけれど!。薫「もう遅い!あぁ~だからさ、奈緒の分も私、もうオーダーしちゃったよ!。」奈緒【えぇ~、何それ!】薫「良いよね!別に…。」奈緒「う~ん、ハイ…。」薫「だいたいさ~、私、奈緒の好み、分かってるじゃん!間違い無いって私のオーダーで…。」奈緒【えぇ~!そうなの~、そこは悪いけど知られたく無かったな!】薫「エッ!何んか言った?!」奈緒「いや、別に…!。」昼さがりのひと時、午後の講義の真っ最中、たまたま休講となった私と田代先輩の少し遅めのランチのメニューはミックスグリル【海老フライ、帆立のソテー、100%ビーフハンバーグ】、コーンポタージュ、シザーサラダ&ライス。“いくらお昼でも食べ過ぎ…っしょう!”おまけに田代先輩、ライス大盛り…。先輩~い!一応女の子ですよね~~!。まぁ~だけどこんなところが田代先輩のバイタリティーの源なのかもですね。それにしても又…美味しそうに食べるんですよ先輩。薫「ね~ね~!」奈緒「ハイ…。」薫「あのね、サヤ先輩の事なんだけどさ~、いきなりで何なんだけどね。ここだけの話よ、実はさ~本当のお母さんが現れたって言う話があるの!奈緒、知ってる?。」奈緒「はぁ~!えぇ~!嘘~何んですか?その話!。」薫「シー!声が大きいって!」奈緒「あっ、すみません…でも、それって。」薫「良いの良いの、知らないならそれで!」奈緒「だけど、そんな話!又どこで聞いたんですか?」薫「それはトップシークレットよ!」奈緒「えぇ~!何んですかそれ!こんな一大ニュースが…!それじゃ表紙だけで中はまだ印刷前の本みたいで、何んか私、凄い消化不良おこしそう。」薫「あら!そう…そんなもんかしら?。」あぁ~分からないったらありゃしない田代先輩の精神構造、私は心の中で思いっきりそう叫びました。薫「だけどさ~サヤ先輩、ご主人と一緒に三月にはイタリアへ行くんでしょう!そんな時に又、色んな事が起き過ぎよね。そうよ、その前に離日記念のリサイタルもあるし近々CDのリリースもある訳じゃない!まゆ美先生の病気の事は何より先決事項だし…!何んか、凄いスペクタクルよね~!。」奈緒「えぇ~!スペクタクルって…!嘘~!。」薫「エッ!何んで…。」私つくづく思いました。【先輩、趣味…悪!どSかも…。】薫「ところでさ~、奈緒、何を頼まれたの?」奈緒「エッ、何んの事ですか?」薫「いゃだ!さっき星野先生を通してまゆ美先生からの頼まれ事があったって言ってたじゃない。その話よ。」奈緒【えぇ~そこに話、飛ぶんかい!】奈緒「はぁ~、その事ですか!実はですね~~~。」致し方なく私は胸に大きなつかえを抱えながら田代先輩にうながされ、さっき星野先生から伺った話をし始めます。今日も又、随分と時間が経過する中、私自身の将来に関わる事柄が今私の口をついて話している諸々の事にそう遠くない時点でリンクするとは私はまだ、思いも寄らない時を過ごしています。又、時を同じくしてまゆ美先生ご一家でも今まさに大きくその方向が左右されるお話が進行していたのです。そしてそれは間も無く詳らかになって行くのですが…。薫「奈緒!」奈緒「ハイ!」薫「何、途中で話が切れるの?早く話して…!。」奈緒「ごめんなさい。どこまで話しましたっけ…!」
(続く。)ルチアーナ作