アンドレア・シェニエ”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

フランス革命に身を投じながら
後に革命政府の方針に異議を
唱え、反革命の大罪を
犯した裏切り者として
理不尽にもその汚名を
着せられたまま、最後には
断頭台の露と消えた
実在の詩人アンドレア・シェニエ。
この悲劇の人物を主人公に
描かれた
歌劇「アンドレア・シェニエ」は
ウンベルト・ジョルダーノの
作曲した最も優れた作品であると
同時に彼の遺した最も著名な
イタリアオペラ最高の傑作である。
革命に至るプロセスの中で
描かれる特権階級である
貴族社会の余りにも世情遊離した
その贅沢三昧な暮らしぶりを
シェニエと言う孤高の詩人を
介して鋭く批判し、合わせて
広く人々の心に人間として
本来あるべき正義を説く。
このオペラの最も重要な主張
テーマがここに凝縮されている。
だがしかし、やがて革命の成功に
酔う人心は何故かその理想から
離れ、自己保身と内部対立を
繰り返し、真実から目を背け、
故国フランスの再構築を自ら
妨げる虚に出る様になる。
疑心暗鬼はエスカレート、共に
革命を勝ち取った仲間達をも
断頭台へと送ると言うおぞましい
流れは連鎖の一途をたどる。
アンドレア・シェニエは
革命の理想を追求し、あるべき
真実を明らかにする事に
奔走するがそれはロペスピエール
率いる時の革命政府により
反逆と認定され彼が理想とした
革命の行く末はここで
頓挫するのである。
劇中で織り成す元貴族の娘
マッダレーナ・コアニーとの
道ならぬ恋の話は完全に虚構の
エピソードであるが、
情熱と慈愛に満ちた、真の革命詩人
アンドレア・シェニエの
その生き様はこの感動的な
オペラにより見聴する者に大きな
インパクトを与える事この上
なかろう。諸兄においても
機会あれば是非この超大作オペラを
ご覧頂きたい。迫り来る感動は
計り知れないものとなる筈だ。
(ルチアーナ筆。)

★第一幕でシェニエが歌う
アリア【ある日青空を仰いで】を
筆頭にジェラールのアリア
【祖国を裏切るもの】
シェニエとマッダレーナの
情熱的心情を見事に体現する
二重唱など聴きどころ満載!。
しかも、飛び切りに美しい。
歌劇「アンドレア・シェニエ」
オペラ史上に輝く傑作だ。