P・マッカートニー公演中止に思う”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

世代を越え絶大な人気と実力を
兼ね備えたミュージシャン。
最早カリスマと呼ぶに相応しい
永遠のアイドル。
P・マッカートニーの昨年に続く
日本公演が彼の突然の体調不良に
よって、ことごとく中止となった
事は誠に残念の極みである。
齢70に及ぶ年齢を微塵も
感じさせないその風貌は
ビートルズ初来日をリアルタイムで
記憶する我々の世代に取って、
一つの伝説の一幕のその又、
延長線上に繰り広げられて来た
彼の音楽的偉業そのものを
眼前に提示されている様な
雰囲気さえ感じさせるもので
言わば、その存在自体が生きる
伝説であるが如く思われる程だけに
病気と聞くだけでファンのみ
ならず多くの私も含む人々が
不安を募らすのは無理のない処で
あろう。
今回の公演も滞りなく開催されて
いたなら大変センセーショナルな
ものとなったであろうし
10万円とも言われる
プレミアチケットが完売する等
ある面過熱気味とも思しき状況で
あったにせよ、そこには真の
エンターテイメントが展開されたに
違いなかった筈であり、返す返すも
残念無念である。それに付けても
彼の音楽的センスはまさに天才的で
ある。その事自体、今更くどくど
と話す必要もないが、
元々ビートルズのサウンドそのものが
20世紀から今日にまで続く
世界の音楽シーンにおいてまさしく
特異稀な先進的展開を見せた事から
鑑みても、その真髄はポールの
音楽的源泉として脈々と息づいて
いる事に疑う余地とてないのは
当然だ。彼はジャンルを越えて
素晴らしい人脈を持つ。
それがクラシカル創作の
分野においても
「リバプール・オラトリオ」と言う
見事な作品の作曲にも大きく寄与し
結実している。
全く持って譜面を読めず書けずの
彼が優秀なアドバイザーの助力を
得て作り上げたこの壮大な
楽曲はクラシックの枠組みに
おいても彼が優れた
コンポーザーである事を如実に
物語る証である。
リバプールは彼を含むビートルズの
活動の原点を成す重要な街であり
この作品で表現された
ありとあらゆる事柄は彼の魂に
直結するリアリティーと成功への
架け橋をたどる音楽的叙事詩なので
ある。各分野、各ジャンルには
その道を最高の時点にまで究めた
偉人が数多く存在するが、
ポール・マッカートニー、彼も又
そうした人物の一人だろう。そして
その修練は今だ終結する事なく
より一層の高みを目指して躍動
しているのだ。現在都内の
病院に入院して治療中の様だが
彼の病状に付いては早速、様々に
取り沙汰がされている様だ。
いずれにしても、彼が早急に快癒し
無事、帰国出来る事を今は
ただただ祈るのみだ。
そして又、いつか日本のファンの
前で最高のパフォーマンスを
披露してもらいたい。彼の弾く
ピアノの前には譜面がない。
全て暗譜だ。…っと言うより
初から楽譜は読めも書けもしない
から必要ない。彼のサウンドは
常に彼の心に内在する。しかし
ひょっとすると、これこそが真の
アーティストのあるべき姿なのかも
しれない。
P・マッカートニー!
病気の快癒と更なる活躍を切に
祈り、願う。私の願いは
ファンの願いとは違う。
偉大なアーティストを正統に評価
すれば当然なされるべき
当然あるべき願いを
表明したまでなのだ。その事に
微塵の嘘もない。
(ルチアーナ筆。)