星野「実はねぇ~ちょっと残念な
事になりました。君達に
事前に話しておいた明後日の
市澤まゆ美先生のアンサンブル
アドバイスの件なんだけれど
まゆ美先生のお身体の具合が
急に悪くなったと言う事で
つい先程なんだけれど、お電話
があって取りあえず明後日は
ご遠慮したい…と、ご本人から
直接のお申し出でした。
まあ、ご本人からの直接の
お話なので、余り心配は
要らないと思うし、現に
まゆ美先生も迷惑をかけて
申し訳ないと言って
居られたし、この振り替えは
近々必ずするので学生諸君には
その旨、宜しく伝えて欲しいと
そう言うお話でした。まあ、
諸君もそう言う事なので、そう
がっかりせず、次の機会を
待っていて欲しい。
宜しいですね。」
菜緒「あの質問良いですか?。」
星野「どうぞ…。」
菜緒「そうすると市澤先生がお越しに
なる事は当面、ご無理な訳
ですね。そんなにはお悪くない
そう思って近々、振り替えが
必ずあると私達、そう思って
いて良いんでしょうか?。」
星野「その通り。先程僕が話た事に
尽きるけど、もう一度
言っておくけれど、大丈夫!
近々、まゆ美先生、必ず
お見えになるから…。」
私はこのオペラ研究室での特別ゼミ受講者の中で最年少、一番下の後輩にあたるのですが、諸先輩を差し置いてつい星野先生に念押しみたいな質問をしてしまいました。でも、それ程実は市澤まゆ美先生の事が気になって星野先生のお話とは裏腹に変な心配をつのらせてしまったのです。
研究室に備え付けられた広報スピーカーから星野先生に連絡のアナウンスが
入りました。
星野「電話らしいね。直ぐに戻るから
君達はこのまま、暫く待機して
いて…。」
先生は職員控え室へお戻りになり、さほど時間も立たぬ間に研究室へ帰って来られ明るい声でこうおっしゃいました。
星野「朗報だよ!。今、電話でね。
明後日だけれど、まゆ美先生の
代わりに娘さんの塚田サヤさん
が、みんなに会いに来る
そうだ。それでも良いか…っと
言う事だったので私の一存で
OKしたから…。」
憧れの先輩が来てくれる…!私達はみんな一瞬息を飲んみました。そして次の瞬間思わず大きな歓声を上げてしまいました。…でもやはりまゆ美先生の事は頭から離れません。
「そうだ、明後日サヤ先輩がみえたら
まゆ美先生の事、良~くうかがって
みよう。」
私は改めてそう思いました。
星野「さあ~喜ぶのはその位にして
講義、始めるよ。
今日はバロック期以前の
オペラに付いての考察、
リュリ及びパレストリーナに
付いて話を進めるので…。
良いですね。」
久しぶりの星野先生の講義です。先生のお話が聞ける事自体は凄く嬉しいのですけれど…。でもこの話、難しいんです。それからメチャクチャつまんないんですよ…。昨日からワクワクしたり、眠れなかったりした割には今は
少し眠くなっちゃたりして…。
私、やっぱりオペラアンサンブル・レクチャーの日が好きで…!。今、私達、モーツァルトのとても可愛いオペラ「バスティアンとバスティエンヌ」をやってるんです。3人しか出て来ない
オペラでこれを全員持ち回りで全ての役を演じるんです。コッラって言う魔法使いは本当は男の人、しかもバリトンが受け持つんですけど、今このゼミ受講者の中に男子学生がいないのでこれも私達がやるんです。それが面白くて譜読みの辛さなんて吹き飛んでしまう程なんです。
星野「おいおい君…!君…!
高安くん…!!。」
菜緒「はっ、はい…!」
星野「さっきから何、独り言を言って
いるんだね。うるさいよ…!。」
菜緒「すっ、すみません。
つい…!。」
( 続く。) ルチアーナ作