ミューズの声”1。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

城東音楽大学、声楽家一年。私の名は
高安菜緒「たかやす・なお」。私、
声楽科主任教授、星野正樹先生の
レッスン生で同時にオペラ研究室の
受講資格もこの春、入学と同時に
頂く事が出来ました。因みに
こちらは内部オーディションでの
資格取得だったので入学早々、
合格を頂けるとは本当のところ
私も思っていませんでした。
ですが運良くそれをクリアーでき、
通常講義外での研究室通いにも
当初は大変でしたしプレッシャーも
ありましたがようやく慣れ
何よりも、ここへ来られるのは
選ばれた人間だけなんだな~っという
少しばかりの優越感も手伝って
今は充実したキャンパスライフを
送っています。しかしそうは言っても
此の所暫く、星野先生はご自身の
オペラ出演やリサイタルでお忙しく
研究室での実践講義が思う様に
行われず、私も少し寂しい日々を
実感してはいました。
そして今日はその実践講義が久々に
行われる日なのです。今日私は
その為か朝から気持ちがワクワク
しています。そう!そう言えば
昨晩から何だかソワソワして
眠れない夜を過ごしたの
でしたっけ…!。
本校舎中央キャンパスの三階、
オペラ研究室、畳で言えば100畳は
ゆうに超える広さを誇るこの部屋、
ここで今日本当に久しぶりに
星野先生のお話が伺えます。
学生は私を含め全部で16名、
精鋭です。ここでは
先生の講義とオペラアンサンブルを
その都度交互に行います。
星野先生は先年亡くなられた
名テノール市澤陸奥先生のお弟子
さんでいらして時折…っというより
事ある毎に市澤先生から
習われた諸々の事柄を私達に伝えて
下さいます。それが又、私達に取って
実に貴重で興味深く、面白く
この研究室に来る大きな楽しみ
でもあります。市澤先生と同じ
テノール歌手であられる星野先生も又、
今この国で最も著名な
オペラ歌手の一人であられ私達は
最高レベルの実践的アドバイスを
その先生から受けられる喜びを
感じています。そして何よりも今週
は星野先生のその又先生にあたる
市澤先生の奥様、市澤まゆ美先生が
私達のアンサンブルの様子を
見にいらして下さる事になっていて
それも今から楽しみなのです。
まゆ美先生は今、星野先生の特別補佐
と言う役職に着いておられ
不定期ですが学校にお見えになり
時折、私達に沢山の事を教えて
下さいます。そうした意味で
本当に今週は私に取ってとても
素敵なそして有意義な一週間に
なろうとしています。まゆ美先生の
アドバイスデーは明後日、
次回の特別講義、本当に楽しみです。
部屋のドアが開きました。星野先生が
お見えです。

星野「みんな、おはよう。久しぶり
だけれど今日から又頻繁に
研究室をオープンするので
欠かさず出席して下さい。
宜しく…。」
冒頭、このご挨拶の言葉を終えた
星野先生は引き続いて私達にとって
意外な事をおっしゃられました。
何と反応したら良いか
分からない程の…。
(続く。)ルチアーナ作