勇気・修練、あとはゴミ!。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

何と言うストイックな言葉、そして行動…。先述で私は世紀のプリマ・ドンナ、マリア・カラスの歴史的名演、
歌劇「トスカ」にまつわる事を僅かだが披瀝した。ソプラノ・ドラマティック・ダジリテ。彼女の声質を表す言葉だが彼女はその神から授かったまさにその声を持って戦後の世界のオペラ界を大きく牽引した。ベルリーニ、ドニゼッティ、などを代表とするそれまで上演回数が極めて限られていたベルカントオペラを世に知らしめその絶対的評価を不動のものとしたのだ。それは又、超人的歌唱力に加え、彼女が希代の名優であったが為になし得た事でもあったのは周知の事でもある。映画で演じた王女メディアも、彼女の多面的才能が遺憾無く発揮された証であったろう。その彼女が歌と演技、即ち表現者或いは演じ手として、何が要求されるのかとインタビューされた時に発した言葉こそがここで表題としたその言葉であった。極めて有名な話ではあるのだが私も含めて声楽を勉強した人間なら直ちに分かる事だが歌を歌うとは
そう容易く出来るものではない。自らの身の丈を充分にわきまえ、声の質感を踏まえ、レパートリーを厳選して行く。しかもそのプロセスをふむ事の前提は止めどない又、区別ない勉強の積み重ねを伴って初めてそれを成り立たせる事が可能となる。粘り強い精神力と音楽に対する深い愛がなければ到底到達し得ない世界だ。オペラ界の女王たるその人マリア・カラス。100年に一度現れるか否かと言う奇跡の声を持った一人の女性。世界一の海運王オナシスとの浮きなの果て50代半ばでの突然死。波乱に満ちたその劇的生涯において唯一、芸術に対しては常に誠実であった証が「歌は勇気を持って挑戦し究極の修練を積む事でのみ成り立つのです。それを全う出来れば、芸術家として生きる上であとの事は全て取るに足らないゴミの様なものです。」と言わしめたのだ。鬼気迫る緊迫感、歌と芝居の完璧な一体感マリア・カラスの前にも後ろにもマリア・カラスは存在しない。幸い彼女はその短い全盛期におびただしい数のレコーディングを行っている。それは今も尚、永遠のベストセラーだ。どうか機会あればこの奇跡の歌声を是非お聴き頂きたい。歌を歌うとはこう言う事なのだと驚きの実感を得る事が出来る筈だ。
(ルチアーナ筆。)

「マリア・カラスの主要
レパートリーを列記しておこう。
歌劇 椿姫”のヴィオレッタ。
歌劇 トスカ”タイトルロール
歌劇ノルマ”タイトルロール
歌劇”カルメン”タイトルロール
先ずはこの四タイトルくらいから
お聴きになるのがお勧めだ。
特にプッチーニの歌劇「トスカ」
第二幕、アリア 歌に生き恋に生き”は
今だこれに匹敵するものとてない孤高の
名唱だ。」