日本の外国人技能実習制度の問題を描いた映画である。難しいテーマだがブラックユーモア満載で見やすく分かりやすかった。
大竹まこと(以下、人物の敬称略)のラジオに監督のなるせゆうせいがゲストに出ており、映画の存在を知った。5/31までYouTubeで無料だったので見た。U-NEXT、YouTubeはじめ様々な配信サービスで有料だが見れる。

技能実習生として日本に来た外国人の主人公。就職した会社で給料未払いのトラブルが起き、日本人の友達と一緒に行政書士に相談する。相談の途中に技能実習を推進する国会議員、技能実習生の仲介業者の代表が登場し、台詞劇が始まる。

説明が多く企業の研修ビデオのようで、監督の思想は少し過激かな?とは思った(個人の感想)が、技能実習生とは何か、問題点は何か、ひいては日本の少子高齢化、デフレという社会問題まで77分という短い時間で描ききっている。基本皮肉を交えたコメディで暗くなりすぎず、テンポも良くて見やすい。登場人物は全部で6人、役者はラサール石井以外知らないが、特に年配の役者はくせが強い役をめちゃくちゃ上手く演じていた。
YouTubeのコメントにもあったが、政治、仲介業者、行政書士、誰かだけを悪者にせず、みんな各々悪い点があるという視点が新鮮だった。そう、私たち国民にも悪いところがある。日本人の安いものが良い、という考えがデフレを招き、外国人労働者を雇う原因になっていること。また、主人公が屠殺の仕事を紹介されたとき、うわっと思ったこと。自分の差別的な意識に気付かされてショックだった。
こういう日本の社会問題を描いた映画は暗いイメージがあってこれまで見たいと思わなかった。しかし、この映画のようにユーモア表現だと見ることができ、それでいてちゃんと考えさせられた。

この映画は「アインが見た、碧い空。あなたの知らないベトナム技能実習生の物語」(近藤秀将)という本が原作らしいので、読んでみよう。なるせ監督の次の映画は「威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~」大学の奨学金制度をテーマにしたもので、クラファンもしている。ひょんなことから知った映画だが、これまで目を背けてきた問題を知り、考えることが出来てとても良かった。