1974年にアメリカで出版されたゲイ小説だが、ゲイと陸上競技の社会問題、青春と愛を書いたとても良い本だった。名作だと思う。


舞台は70年代のアメリカ。主人公ハーラン・ブラウンは陸上のコーチをしていたがゲイであることを理由に解雇される。その後別の大学でまたコーチとして働くが、ある時彼のもとに3人の学生アスリートがやって来る。彼らもまたゲイを理由に学校と競技を追われたのだ。彼らとオリンピックを目指し、また3人の内1人ビリー・シーヴとハーランの恋愛、ゲイ差別のある社会と古い習慣が残るアメリカ陸上界を書いている。

まず、この本は小説として素晴らしい。ゲイ小説とひとくくりにするのは勿体ない。ストーリーはしっかりしており、ゲイ差別や陸上界の不条理さ、陸上競技の生き生きした描写、そして衝撃のラスト。読書後は深い感動が残った。

この本において、ゲイはただの人間の性質の一部でしかなかった。ハーランとビリーの愛は、男女のそれと何も変わらなかった。この書き方がとても好きだった。
印象的だったはアメリカの差別や理不尽なことに対して堂々と闘う姿勢である。差別的なインタビューを受け、それに対する反論の文章を作成して出版社に売り込んだり、ゲイの集団に呼び掛けてパレードをしたりと、その行動力には驚かされた。

文体は(翻訳だが)基本淡々としている。しかし盛り上がるところはしっかり盛り上げ、感情的になりすぎない文章がとても読みやすかった。
作者は女性である。女性でありながら、異性の同性愛をここまで理解していたとは凄い人だ。逆に女性だからこそ客観的な視点で、現実をありのまま見れたのかもしれない。

古い本だが、今読んでも面白い名作。Amazonでは在庫無しになっていたが、図書館にあればぜひおすすめ。