中国でネット発表された同性愛を扱う小説で、大陸で映画も作られたが上映禁止になった。
この本は名作だ。人が愛を求める根本にある心情が書かれている。

天安門事件一年前の北京。北京出身の高級官僚の子どもで青年実業家の陈悍东チェンハンドンと地方出身で北京の名門大学に通うため北京に来た蓝宇ランユー。彼らが出会ってからの日々をハンドンの視点から書いている。

ハンドンは金も社会的地位もあり、男も女にも不自由しない。だがランユーはそれらを求めず、ハンドンは彼に夢中になる。自分の感情を表面では否定しながら。ハンドンのランユーに対する感情はとても純粋なもので、まるで青春の恋のようであった。その剥き出しの感情が荒々しく、そのまま書かれており自分の心も揺さぶられる。原始的な愛だと感じた。
逆にランユーは家庭の複雑な事情ゆえ諦観したところがあり、でもまだ若さゆえの輝きも持っている。このアンバランスな魅力。ランユーの外見についての記述が最初から最後まで何度も出てくるが、彼の魅力的な姿がイキイキと想像できてとても印象的だった。愛についてもアンバランスな感じで、掴み所のない感じ。そこがまたハンドンを惹き付けたのだろう。
この本は全体的に何か湿っぽい、アジア的な雰囲気がある。中国でいう面子、日本で言うべき論みたいな見えないしがらみである。良い家の女性と結婚し、子どもを持つのが当たり前。このしがらみは世界中何処でもあるのだろうが、アジア圏の日本と中国は似ているなと思った。
最後、ランユーは交通事故で亡くなり、ハンドンはカナダに渡りそこで家庭を持ち話は終わる。悲劇だが、何だかホッとした。2人の未来は想像出来なかったから。いい関係のまま終わって良かった。これで彼らの純粋な愛は変わらない、完璧なものになった。

官能シーンは多い。性欲発散のための性行為の記述が多く、女の自分にはない視点で新鮮だった。

※天安門事件は、ランユーは現場には行ったが本格的に参加してなかったこともありさらっと終わった。拍子抜けしたが、報道が未だに規制されてるからな。北京市民から見てもこんな感じだったのか、というのは新しい発見だった。何より89年は自分が生まれた後だということが衝撃だった。

読後、虚しいような、でもどこか人間の本心に触れたことに感動する気持ちになった。こんなに心に余韻を残す本は久しぶりだった。
映画も見ないと!