歌詞カードの存在しない新曲の詞を書き出しました。
今後スタジオ盤がリリースされることは考えにくく、
ならばもう自分の耳で読むしかなかった。
一部を除いて、ある程度正確に起こせたと自負してます、
ので記載しておきます。
 
 
 
単なる穴
 
今 どこか行ってたでしょ 目 あけて寝てたでしょ
なまえ よばれてるのに無視して
ちがう とこに行ってたでしょ
 
ばかでかい 穴ぼこ 正気で いるのがつらい
思慮深い 穴ぼこ 正気で いられない

今 おれはここにいない もう 例え話じゃない
なまえ すら意味のない 人たち もう まともじゃいられない
 
なま臭い 穴ぼこ 正気で いるのがつらい
慈悲深い 穴ぼこ 正気で いられない

 
※Reading
穴がおめかしして近づいてくる きれいだよ ばかでかい
穴がおれを叱る 理路整然と 何度も何度も何度も何度も
おれは泣いた 比喩ではなく涙を流して 
もうだめだ もうなにもかもどうでもよくなった
すると穴は急にやさしくなるの すべてを包み込む ばかでかい 
単なる 穴
 
 
今 どこか行ってたでしょ 目 あけて寝てたでしょ
なまえ よばれてるのに 無視して
ちがう とこに行ってたでしょ
 
ばかでかい 穴ぼこ 正気で いるのがつらい
思慮深い 穴ぼこ 正気で いられない
 
 
 
 
 
 

お前の田んぼが好き
 
死んだおじさんの墓に 陽があたっている
まったく平和で長閑な日だ
おれは 土壇場で 気が焦っている
払拭されない負の気配だ
 
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう

 
背広にバンダナ 気取った輩
一触即発 すぐすぐすぐ
おれたち産婆に引きずり出されたよね
で ここで出会えたわけだ
 
ほーら突き破ろう
ほーら突き破ろう
ほーら突き破ろう
ほーら突き破ろう

 
お前の田んぼにみなはまってゆく
まったくだらしのない笑顔で
おれは 土壇場で 気が焦っている
払拭されない負の気配だ
 
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう
ほーら振り払おう

おじさんの墓に 陽があたっている
そしてお前の田んぼにみなはまってゆく
おじさんの墓に 陽があたっている
そしてお前の田んぼにみなはまってゆく
 
 
 
 
 
 
 
いまだに魔法が解けぬまま
 
 
城が無くなり野原が あらためてそこに建った
受け入れなくちゃすべてを たやすいことではないが
 
ありのままを 見てた 光のあたるこの場所で
いつまでも 見てた いまだに魔法が解けぬまま

汚れていても綺麗だった かつてそこにあった
きみは無言で去るのか とがめる資格も無いが
 
扉の鍵をかけた 光の中を潜り抜け 
いまどこへだれと いまだに魔法が解けぬまま
 
ありのままを見てた 光のあたるこの場所で
いつまでも 見てた いまだに魔法が解けぬまま

城が無くなり野原が あらためてそこに建った
見届けなくちゃすべてを たやすいことではないが
 
夢が無くなりかけてきた 闇が存在しなくなった
きみは無言で去るのか とがめる資格も無いが
 
光の中を みてた 光の当たる この場所で
いつまでも みてた いまだに魔法が解けぬまま
 
あたたかい痛みか いまだに甘いときめきや
なまぬるい夜か
ぼやける 空 世界が

 
 
※ラストの2行だけは、坂本さんの滑舌がフニャフニャで自信がありません
フィーリングでそれっぽく書きました
 
 
 
 
 
「城が無くなり野原が あらためてそこに建った」
 というすべてを真っ平らにしてしまった無常なる一節。
そして、
 「光の中を みてたい 光の当たる この場所で
いつまでも みてたい いまだに魔法が解けぬまま」
 という吐露を残した、涙なくして読めない文言。
 
ただ、
「光の中を みてた 光の当たる この場所で」
「いつまでも みてた いまだに魔法が解けぬまま」のように、
「みてた」の部分が問題で、聴き方によっては「みてたい」のようにも聞えます。
音源を聴いてもらえばわかると思いますが、
この部分は流れるようにフェードアウトインして歌われるので、はっきりとは断言できませんでした。
もしこれが「いつまでも みてたい」という願望であるのなら文意がまるで逆転してしまう。
 
「みてたい」という願望なのか、「みてた」という断定なのか。
どちらもありだと思う。
ただ全体を読むなら。
僕は、「みてた」んだろうと思う。魔法が解けぬままの状態で。
すべてのかたちあるものが瓦解していく様を。
 
全編に漂う荒野のような無常感、虚無感、諦観。
たやすいことではないと了解した上でみとどけようとする覚悟。
何もかもを飲み込んで経過していく時間の流れを読む限り、
これは願望ではなかったように思われます。
 
さらに言えば、時間と空間という究極の現実は、
魔法=夢側の視点でからみた希望的観測などではなく、
ただ単に観測者に徹することで、立ち位置はより曖昧に、
どちらがリアルなのか判然とさせない面白身も感じられます。
 
 
この曲を受けて今一度、
もうどこを見渡しても帝国はないんだと。
まるで帝国は最初から幻だったかのように、
あるいは単に自分が夢の中で踊ってただけなのかも知れない。
あの3人に会うことは叶わない現実がいまさら重くのしかかってくる。
結局、僕の中でステージの上の3人に会うことは夢を見ているようなもので、
夢の中で夢であることを自覚した瞬間はとても寂しい。
もう少しだけでいいから、夢の中で遊ぶ時間が欲しい。
 
 
現実が重すぎて、横にどけておきたいのだけれども、
どうやってどけたらいいのかわからないで潰されるがまま。
しかしながら、これほど強い楔を打ち込んでくれたYYTに対し、
存在してくれてありがとうという念でいっぱいだったりするのです。
 
唯一の希望として。
YYTの音が盤面の溝に、脳に、刻み込まれたことで
その効力はこれからも僕が滅びるまで失われることは無くなった。
帝国が野原に還ろうとも、蜃気楼のように、いまも僕の目には見えてる。
どこにあるのか、はっきりとわかる。 
 
魔法は一度 解けたら二度と 
かかりはしない わかっているから
 
だから
いろいろな瑣末と思えるようなことでも逃したくはなかった。
 
最後に。
中に浮いた言葉に文字を与えるという作業はとても有意義なものでした。
ライブで出会った時には拾いきれなかった言葉。
その一文字一文字にペンを走らせながら、出現していった字面と対面するたびに、
感動して震えました。
 
そういえば。僕が最後に聴きに行ったのは、
ちょうど一年前の今日です。