始まりの覚えは乏しいが
古き影絵人形が遊びの小箱を手に入れたか
音鳴る小箱であったかも
遊びの小箱なれば餓えたる狼の伝え説きか
其れから吾は気を失わされて攫われた
気づくと水で隙間無く満たされし部屋なり
息苦しく思い出口を探し
二間か三間続きの部屋をぼんやりと往復し
硝子戸を破ろうと手を掛けると
水色の硝子戸は難無く開きたる
開きたる水色な硝子の隙間から
澄んだ外の色と澄みし気を吸い込み美味い
生きた心地になりて頭も回り出したのか
落ち着いて見れば部屋に
水など満たされておらぬ
ただ水色の硝子戸で覆われたる部屋なり
検めて硝子戸より
開かれたる澄みし外を眺む
港に平たい大猪臭船が碇を下ろして居る
其れは黒い墓石が
倒れて浮いているかにも見える
吾は部屋に目を戻すと
吾よりも歳を重ねし髭面なる男が現れた
髭面の男が吾を攫いたる訳を話す
吾が組み闘いたる筋と
何事かを透かし見る能を持ちたるが故に
其れを己が側に欲しく拐かしたのだと言う
はて組み闘いたる筋
(其れは餓えたる狼だろう)
人違いなり
人違いなれど髭面なる男は話し続ける
吾の他に吾の弟も攫ったと言う
(だろうね空覚えに餓えたる狼)
吾に弟など居らぬが
(いや弟違いの櫛なら…)
其の弟は骨法を使うのであろう
兎に角も吾は攫われて
髭面なる男の側で
何事かを成せとの言だ
其れから
其の所での話であったか
先に進み開かれたるのちの事であったか
悍ましき殺しの下手人探しを頼まれる
人の身体をバラし殺す手口の下手人なり
髭面なる男は
此の事を解くにあたり
吾に能の有る女を引き合わした
吾は女と二人で事にあたる
初めのバラされたる殺しは
富たる家の若い娘であった
解かれたる体の
何処か人形染みて現を覚えず
此の殺しを
能の有る女と解き進める内に
ある若い男に行き着き目星を付ける
目星を付けたるも尻尾を攫めず
バラされたる殺しが続く
そして
いよいよ吾と似たる能の持ち主らが集い
若い男を追い詰める
外つ国との係わりも有り
差し別けたる誤りを避けたく
詳しくは記さぬが
若い男は富恵まれたる家の筋で
外つ国を統べたる者の息子なり
凡その快き楽しみを尽くし果てたのちの
狂いたる行いらしい
狂いたるも頭の切れる事
集いたる能の持ち主らも敵わず
其れでも如何にか追い詰めたり
若い男の終いなる悪足掻きにて
幾人もの夥しくバラされたる
肢体の散りし室の内に紛れて
変わり果てた若い男の一部を見つけた
如何やって自らの身体をバラしたのか
両の腕も無き腹より上だけの若い男が
透けたる布に包まれて
死んだ振りをして居る
吾の他なる能を持つ者が
(吾と組まされし女であったかも)
透けたる布に手を掛けると
変わり果てたる若い男が
透けたる布の下で口を動かし
開けたら己は(若い男は)死ぬると脅す
布に手を掛けたる者は其の手を止めたが
吾は若い男の言葉が嘘であるとの合図を
手を止めたる者に送り
透けたる布が開かれる
若い男の一部が露わる
…
身取られた魚かな残されし腑も骨も露わな
変わり果て一部となりし若い男が
まだ生きて話す
血の気も汚れも無く此れも人形染みている
…
然て其処から進み
若い男の事で集められし能を持つ者らが
陰に始末される事となる
幾人かの能の有る者に混ざり吾も逃げる
誰の持ち物なるか自動車に乗り詰めるが
片付けの者らに囲われる
片付けの者らは揃いて筒を向け
一度に弾を放つ
吾は此れまでかと覚えしが
自動車の体も窓の硝子も
余程に強く造られたのか
硝子の外側に傷を作るに留まり
其の外側が傷も
能有る者が窓の内側より撫でると消え直る
自動車は発ちて
恐らくは逃げ延びたであろう
其れから
何故か自ら命を断ちし和菓子屋の娘が
其の通りに和菓子屋の娘の年頃で現る
其れと公園の柴犬が飼い主
此れも若い姿である
(因みに吾はポチママのユキが好みなり)
これに思い出したるあれば
追いて記す事もありや