前回に続いて、2017年入学の合格結果ですが、今回は、ロースクール合格者に関してです。また、ロースクール入学や米国弁護士受験資格に関するネット上のデマに関しても注意したい。
過去何年か、我々の講座では、海外大学院に出願する選択肢として、医学部と法学部を紹介してきましたが、どちらかというと人文系の学部とか、ビジネス系の学部への出願が多かったと思います。今回の受講生は、テンプル大学のロースクールに合格しました。
テンプル大学は、アメリカペンシルベニア州にある州立大学の名門校。ランクとしては;
US News総合ランキング118位
https://www.usnews.com/best-colleges/temple-university-3371
と、総合ランキングでは中堅であるが、ロースクールに関しては評価が高い;
US Newsロースクールランキング51位
https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-law-schools/temple-university-beasley-03139
また、National Law JournalのThe Top 50 Go-To Law Schoolsにも入っている;
http://www.nationallawjournal.com/id=1202751499299?slreturn=20170428055319
ただ、これらのランキングよりも、注目すべきは、テンプル大学の卒業生がペンシルベニア州の司法試験を受験した際の初回合格率が、92.38%である点である;
http://www.law.temple.edu/news/temple-law-posts-92-38-pass-rate-among-first-time-takers-pa-bar-exam/
当然、エール大学とか、ハーバード大学のロースクール卒業生も90%以上の合格率であるが、これらのロースクールは、トップ10位に入っている。一方、テンプル大学は、ランキングは50位前後でも、90%以上の合格率である。この初回受験者の合格率が90%以上ということは、テンプル大学のロースクールを卒業した人の90%以上は、1回目の受験で合格して弁護士になるということで、合格後から、自身の法曹界のキャリアをスタートできる。ロースクールに留学する人の多くは、司法試験の受験資格取得と、司法試験合格を目的としているので、こうした卒業生の合格率のようにランキング以外の数字も、重要視して留学先を決めるべきである。
ちなみに、アドバイザーの中で、弁護士資格を持っているアメリカ人に米国司法試験の平均勉強時間を聞いてみた所、多くの人は、6週間〜3ヶ月のようである(ただし、これは、J.D.(3年生ロースクールの法務博士)卒業者の結果で、下記に説明する日本人が一般的に入学するLLM(1年生の法学修士)修了者の準備期間は異なる)。
さて、LLMというのは、主に米国のロースクールが提供していることが多い、1年の法学修士号である。通常は、外国で法学教育を受ける人に対して、門戸が開かれている。日本で教育を受けた人の場合、国内の4年生大学法学部卒もしくはロースクール卒業者が対象となる。また、国内弁護士の資格を持っている人にも入学資格がある。
このLLMだが、入学する難易度は、J.D.(Juris Doctor=法務博士)に比べると難易度は低い。以下に留学生がロースクール留学する際の、LLMとJDの特徴を比較してみる;
J.D.課程(Juris Doctor=法務博士)
- 就業期間は3年
- 入学要件はTOEFLもしくはIELTSに加え、LSATスコアの提出が求められる。また、学部のGPA(評定平均値)は比較的厳しくみられる。
- 3年プログラム卒業後は、全米50州の司法試験の受験資格が与えられる。また、米国の州以外にも、コモン・ローの国の司法試験受験資格が発生する場合もある。
- 州によっては、その州のJ.D.を卒業するだけで、無受験で弁護士資格を取得できる。
- アメリカ人中心のプログラム。クラスメイトの大部分がアメリカ人。
LL.M.課程(Master of Laws=法学修士)
- 就業期間は1年
- 入学要件はTOEFLもしくはIELTSのみ。また、学部のGPA(評定平均値)はJ.D.に比べるとそれほど厳しくはみられない。
- 受験資格は、50州ではなく、10州以下の州のみ。他のコモンローの国の受験資格は、実際に米国の弁護士資格を取得した後で発生する場合が多い。
- クラスメイトの大部分が留学生。
このような特徴があるが、米国の司法試験受験を考えると、安全なのはJ.D.に入学することである。一方、3年間であるので、授業料が単純計算で3倍かかることになる。ただ、受験がしなくてもよい州もあるという点と、英語の鍛える上では、アメリカ人のクラスメイトと切磋琢磨できる点もよい。
LSATはかなり厳しい。原則3回までの受験で、最高スコアではなく、初回のスコアからの平均値を取られるので、一度でも大きく失敗すると、そこから道が閉ざされてしまう。なんとなく、「練習のため」に受けることができない試験である。アメリカ人でも、かなり、入念に準備した上で、受験をしている。
一方、LL.Mに関しては、海外で弁護士資格、もしくは、法学教育を受けた人にとっては、期間と費用を考えると、司法試験受験を目指すには嬉しいプログラムである。ただし、注意しなければいけないのが、受験可能な州が2年に一度位かなり変動するので、入学前に調べておくことが必要である(我々のプログラムでも当然、ロースクール進学希望者には出願前にこの点をお伝えしている)。
では、実際の司法試験の難易度に関してだが、これは日本や他のアジアの国の司法試験に比べると合格はしやすいと言える。例えば、日本の場合、ロースクール修了者は、年一回の試験を最高3回まで受験資格が与えられるが、合格率は20%台前半である。一方、米国の場合は、年2回の司法試験を受験できるチャンスがあり、受験回数の制限は原則なし。また、合格率に関しては、70%以上の州が多く、一番難しいと言われる、カリフォルニア州の司法試験も、45〜55%位である。連邦法だけを使いたいのであれば、難易度の低い州をわざと受験する人もいる。それでも、合格してしまえば、弁護士業務はできるし、他のコモンローの国の弁護士の受験資格も発生するので、キャリアの選択肢を増やすことができる。
勉強の期間は、私の周りのアメリカ人は3ヶ月位で合格している人が多いが、日本人は一般的には、6ヶ月〜2年と、少し、個人差があると思う。もちろん、英語力や州にもよる。一般的、選択問題の比率の高い州を受験する日本人は、比較的短期間の試験対策で合格している一方で、論文問題の比率の高い州を受験する場合は、長期間に及ぶ場合が多い。ただ、こうした論文対策も、我々の授業のテキストと比べると、法律的な論文の書き方の方が、研究論文に比べて、フォーマットが決まっているので、ある程度の型にはめると対策はしやすいと思う。
今回の合格者は、既にLL.M卒業後の2018年米国司法試験受験を目指しているようなので、是非、別途、受験対策等をお話していただく機会を儲けたいと思う。やはり、ただ合格して終わり、入学して終わりというサポートではなく、合格後何をするか、卒業後どうするかという所を考えながら、これから留学をする人は検討して欲しいと思う。
P.S. ちなみにですが、「日本で法学教育を受けた人がLL.Mに取得しても、米国の司法試験の受験資格が発生しなくなった」という話がネット上で流れているが、これは、明らかにデマである。今回の合格者もそうですし、毎年、受験できている人たちがいます。何かしらビジネス上の目的があって、そうした間違いを流している一部留学斡旋業者があると思うが、実際には、受験できますので、米国司法試験受験をご検討されている方は、よく調べて欲しい。もちろん、我々の講座の受講生は、この辺りもしっかりと対策していきます。