まだ続いております仙台藩お家騒動の歌舞伎版
『伽羅千代萩』についてのお話
藩主隠居となる場面の『花水橋』が終わりまして、続いては
2【竹の間・御殿・床下】の場面。
鶴千代=亀千代(幼少の伊達綱村)
鶴千代の乳母政岡=隠居した先代綱宗の側室
仁木弾正=原田甲斐(刃傷沙汰おこした奉行)
八汐は仁木弾正の妹
という配役を踏まえまして、ご覧ください。
ここでは、幼くして藩主となった鶴千代君(つるちよぎみ)を、乳母政岡(めのとまさおか)と幼い息子の千松(せんまつ)親子が命がけでお守りする様が描かれていて、幼い主従の健気ぶりと、強い政岡の姿に涙が誘われる場面です。
では【竹の間】から。
国家老の仁木弾正(にきだんじょう)率いる一派は先代の隠居に飽き足らず、幼い藩主鶴千代君のお命も狙います。
それに気づいた乳母政岡は鶴千代君が御病気と偽り、かつ本人が嫌がって体に障るからと男性陣を寄せ付けないようにします。
(暗殺するにしても来るのが女なら政岡でも防げるから)
だもんで、敵方は仁木弾正の妹八汐(やしお)を医学の心得があるからと見舞を装って送り込んできます。
鶴千代ぎみの脈をとり、脈が乱れるのは、暗殺者が近くにいるに違いないと言いたてる八汐。(おめーだよ!)
ソレ!と天井をつけば、潜んでいた暗殺者が転がり落ちてきて
「政岡に頼まれた」とか言い出します。(ふざけんなよ)
証拠とばかりに政岡の名前が書かれた鶴千代君を呪い殺すための書面も出てきて、共犯者と物的証拠がそろい、政岡が嵌められるシーンなわけですが、ここで鶴千代君が頑張りますよ!
『悪者でも大事ない』
と、政岡の前にかばい立ち、乳母と一緒にいたいと訴えて健気に政岡を守ります。
八汐と一緒に見舞に来ていた沖の井御膳(家臣の奥様)も、なんかおかしい出来すぎじゃない?といぶかしがり、政岡の疑いが晴らされ、仕込みを頑張った八汐が悔しそうに帰っていくのです。
ざまあ( ̄▽ ̄)
続いて【御殿】
毒殺を恐れる乳母政岡は、鶴千代君は御病気で食欲がないと偽って、食事を下げさせては部屋の茶道具で僅かな飯を炊き、小さな塩むすびをこっそりと食べさせます。
育ち盛りに一日一食塩むすび( ̄ー ̄;
足りるわけがございません。
小さい子がヒモジイってのはそれだけで涙が出ちゃうわよね。
で、また政岡の息子千松も同じ生活をしているのですが
「侍の子というものは、お腹がすいてもひもじうない」と、これまた幼い千松が鶴千代君を励ますのよ。自分もおなか空いてるのに!
(iДi)
そんなところに、またまた八汐が登場します。
今度は幕府のお偉いさんの奥様である栄御膳(さかえごぜん)を伴って。しかも今度は毒入りの菓子を見舞に持ってきます。
腹をすかせた子供の前に毒入菓子持参とか、ホント地獄に堕ちろと憎々しい場面ですよ。
幕府の重臣の奥様持参のお菓子です。食べれば死ぬ毒入りと分かっていても断れません。でも、政岡親子は普段から覚悟ができています。
政岡の息子千松は、行儀の悪いアホな子を装って鶴千代への菓子を掴んで口に入れ、残る菓子は蹴散らします。
ここが毎回泣かせられる場面ですが
政岡の目の前で、毒菓子を食べた千松は
胸を抱えて苦しがり、舞台の端から端を左右に走ります。
毒の入った菓子と知れては都合の悪い八汐は、殿様の菓子に無礼者めと幼い千松をむごくも殺してしまいます。
この一部始終を、鶴千代君を内掛けの懐にお守りしながら表情を変えず見届ける政岡。その心情を思えば穏やかには見ていられません。
しかし、その毅然とした態度を見て栄御膳が勘違いをします。
わが子がこのような死に方をして平気なわけがあるまい。さては政岡は我が子と鶴千代君を取り換えたに違いない。なあんだ仲間じゃ~ん。ってね。アホかこいつ。
人払いをして、栄御膳はあなたもどうぞとこの騒動の連判状を政岡に渡します。政岡は息子の命と引き換えに鶴千代君暗殺計画の物的証拠を掴むわけですが・・・
勘違いのまま栄御膳が退場すると、浄瑠璃で『後には一人政岡が・・』と唄い
茫然とした政岡が、一気に泣き崩れて母の姿をさらします。
声も抑えず泣く政岡に、こちらもどっと涙が出ます。
連判状を握り、ようやったと千松を褒めてやりながら泣く政岡に、またまた登場した八汐が切りかかり、連判状を取り返そうとしますが
腕に覚えの政岡が返り討ち。息子の仇を討つ場面でもあります。
ざまあ八汐 (`Д´*)q
さて長くなりましたが最後に【床下】
ここは本当おまけみたいな場面ですよ。
息子の命と引き換えに手に入った連判状を、鼠が加えて逃げてしまいます。
床下に場面がきりかわり、その鼠を踏みつけている荒獅子男之助が登場します。この人は味方でこっそり若君をお守りしていたわけですが(こっそりすぎんだよ!千松君が代わりに死んじゃったじゃねいか!)
怪しい鼠をたたき殺そうとするも逃げられてしまいます。
それもそのはず
逃げたネズミの正体は妖術で化けていた国家老の仁木弾正本人。姿を現して花道を逃げて行くところでこの場面が終了となります。
はあ、長かった。
御殿の場面でハラハラしたり泣いたりでぐったりするので、私にとっちゃ最後の床下の場面はもはやおまけみたいなもんなんですが、一応悪の華である仁木弾正の見せ場になっているのよね。
殿様の次の権力者で、頭もよいし顔もよいという悪役ながら花形なのが仁木弾正という役なわけで。
しかし鼠に化けるとか
仙台藩の国家老をなんだと思ってんだよって話ですが、まあお芝居の醍醐味みたいなもんでしょうね。
幼い主従の見せ場がある【御殿】
子役のいる時期にしか演じられませんからなかなか見られないですが、もう一度見たい場面のひとつです。
ところで、政岡のモデルは綱宗公の側室三沢初子だそうですが、その性格は政宗公の乳母喜多が参考にされているという説もあります。喜多がモデルと言われれば、なるほど納得な政岡の気丈ぶりなのです。
さて、長くなりました伽羅先代萩。
次回で最後の予定です。
しからば、ごめん!
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