CEATECでパネルディスカッション「ハードウェアベンチャーの可能性」を聞いてきた! | 3Dプリンターにバンザイ

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日本最大の家電・情報産業の展示会であるCEATEC。数年前まで、家電と関連産業のメーカーがこぞって新製品や新技術を競っていましたが、ここ2~3年は、会場に空きスペースが目立ち、メーカーの展示製品・技術にもどこか華がなくなってきていました。

今年もその流れは変わらず、SONYが出展を取りやめるなどかつてCEATECの展示に心を躍らせていた身としては寂しい限りでした。
展示会全体としては縮小傾向にありますが、ほとんど取り上げられることがなかったハードウェアスタートアップが取り上げられるようになってきました。10/11(土)は「ハードウェアベンチャーの可能性」というパネルディスカッションがあったため、それを聞くため幕張メッセまで足を運んで来ました。

パネルディスカッションをされた面々ですが、『PrototypingLab』などの著者でIAMAS教授の小林先生がファシリテーター、パネラーとしてKICKSTARTERで8万ドル弱を集め先日出荷を開始したMoffの創業者の高萩さん、coineyのプロダクトデザインなどを行っている久下さん、富士通の「あしたのコミュニティーラボ」というプロジェクトの代表をされている柴崎さんという4名で行われました。

テーマに沿いながらも話題がとびとびになりつつ議論を行ってゆくというユルい進行でしたが、ハードウェアベンチャーとして製品開発を行う観点で参考になる点が数多くありました。

ハードウェアを開発するハードルが下がったということで持て囃されているデジタル工作機械ですが、単にハードウェアを造ることに価値があるのではなく、アプリケーションやサービスまで含めてユーザーにどのような体験を提供できるかに価値があるのだということを、改めて気づかされました。

Moffの場合、製品を開発する上でコアとなるのは筐体や電気回路といったハードではなく、動作を制御するソフトウェアであったり、ネットとつながって新しいユーザー体験を提供するサービスだったりするとのこと。

その中で開発プロセス(価値を生むプロセス)で大きく変わったのは、ハードウェアの製品開発においても企画、開発、出荷後のユーザーとのコミュニケーションがより密になったことです。ハードウェアベンチャーが有効に使っている(使わなければいけない)のが、ユーザーとのコミュニケーションの部分だと感じました。

企画・プロトタイピングの段階では、デザイン思考といわれるようなユーザーの行動観察を行いフィードバックをえます。デジタル工作機器のおかげで、この段階に掛かる費用と時間を大きく削減することができるようになりました。

プロトタイプができ、量産設計を行う前にクラウドファンディングで、ユーザーからの予約を取りつけます。これもユーザーのニーズを計測するコミュニケーションと言えるでしょう。

また、クラウドファンディングで支援を受けたユーザーを単なるお客さんではなく共同開発者の1人とすることができます。Moffの場合、開発情報をなるべくオープンにしていたため、品質をあげるために出荷予定を遅らせるジャッジをした時も、ユーザーはそれを支持してくれたとのことでした。

そして出荷後ですが、現在の情報機器は機能のアップデートやアプリケーションのインストールをして機能を追加してゆくため、出荷後のユーザーのやりとりこそが最も重要な面です。ユーザーコミュニティや、行動履歴、追加のアプリケーションこそが競合に対しての強みとなるからです。

つまり、デジタルファブリケーションもIoTもユーザーとのコミュニケーションの頻度を上げ、情報量を増やすための手段に過ぎません。資金、技術、設備などのリソースが不足するハードウェアベンチャーとって、意思決定の早さによってユーザーとのコミュニケーションを密に行い、ニーズに早く到達することこそが勝負なのだということを強く感じました。