『余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる』byロバート・B・ライシュ
- 余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる/ロバート・B・ライシュ
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読了。
米国の富裕層、上位1%の得る所得は、国民総所得比において1970年代に8~9%だったものが、2007年には23%にまで上昇している。つまり、いわゆる中間層(または下層)の人たちが生活に必要とする収入の一部が、ドンドンと最富裕層に吸収されていっているということだ。
これと同じ現象は1920年代の大恐慌時にも起きており、所得格差が不況を引き起こす根源であることをこの本で述べられている。
要するに、中間層にお金が還元されれば、彼らは収入のほとんどを実体経済の中で消費し、まっとうな取引が循環し、結果的に経済が回って好景気に向かっていく。しかし、その中間層にいくハズの収入が最富裕層に集中してしまうと、富裕層の人たちは実体経済で使いきることはなく、国境を越えた投資マネーとして金融経済のほうにいってしまい、まっとうな取引による実体経済を停滞させ、不況に陥らせてしまう。
ウォール街の金融マンを代表する最富裕層の人たちは、彼らが得た莫大な利益の一部は、ロビイストを通じて政治家への献金漬けに使い、継続的な金持ち優遇の政策(仕組まれたゲーム)を実現していく。
一方で、中間層の人々はより良い生活を求めているものの、機械化などによるオートメーション化などでそれでなくても仕事を失いやすい環境の中、ジリ貧の収入を補おうと、1)夫婦共働き、2)残業代目当ての労働時間の延長、3)貯金の切り崩し(借金)、というパターンに陥っていく。
終盤、こうした社会構造への解決策(いかに富裕層から中間層、下層の人たちへ富を分配するか)を示している。
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悲しい中間層の行く末に、何だか気が滅入る思いで読んでいたけれど、
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を思い出した。『居酒屋』は普遍的な貧困を描いているけれど、『余震』のほうは今起こりつつある中間層の話だけにリアルに迫ってくるものがあった。世の中の仕組みっていうものを、もっともっと勉強していかないと、仕組まれたゲームで踊らされ、気付かぬうちに搾取される側の人間になってしまう。