『電子書籍の衝撃』by佐々木俊尚
- 電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)/佐々木 俊尚
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今年は電子ブック元年と言われているけれど、電子書籍の衝撃の第一波が来るのももうすぐ。
ま、なんというか、個人的にとても興味深くウォッチングしているところ。
キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット。
これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム。
電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと、本のフラット化。
そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界。
と、電子ブックによる円環を示した上で、従来の出版社は
1.書き手との360度契約
2.スモールビジネス化
の方向へ行くだろうと予測している。
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私が思うに、今の現状で一番不安定なところは、本はテキストによる情報であるにも関わらず、そのアナログとデジタルの溝はかなり深く、完全に隔たっているところだと思う。今そこに、グーグルだとか、昨日から始まったというブックスキャンサービス(1冊@100円でPDFにしてくれるサービス!)などが、懸命にその溝を埋めにかかっている。
その溝がなくなった途端に、テキストデータはデータ量としては軽く、交換が異常に簡単になり、利便性と相反して付加価値の維持を難しくしてしまう。新聞のように、今のビジネスモデルの延長線上で考えていくと、デジタル化による付加価値の喪失という事態に陥ってしまうのは明らかだ。
全く別のルールでデジタル世界での成功にチャレンジするしかない。
昨今、流行語になった『FREE』だとか、SNSとかツイッターとか、いろんなメディアとがっつりと本気で向き合い、全く別ベクトルでビジネスモデルを確立していかないといけない。
と、思う。
具体的には、まずは自前のデジタル書籍の販売サイトを強化すること。キンドルで読んでも、iPadで読んでも構わないけど、小説というコンテンツは版元が売るぜ。という方向を目指すべきだと思う。だって、どうせPDFにするくらいですむ話なんだから。彼らはデバイスから直接、3G回線とか使ってiTunesとか、amazonとかで小説を買えるよう囲い込みするのだろうけれど、それには日本国の国益も賭けて全力で抗わなければいけない。
大手版元各社でそういった販売サイトを持ち、彼らの販売ルートには極力、作品を卸さないという姿勢が必要だろう。ただし、それによって読者の利便性が保てないのは確か。であれば、キンドルやiPadは、版元の販売ルートにシームレスでリンクできるようにするけれども、あくまで成果報酬によるマージンは出版社側が優位を保てるようにする必要がある。
版元各社という微妙なゲーム理論が成立してしまうのが悩ましいところだけども、このあたりは、それこそ電子書籍協会あたりに頑張っていただいて(笑)、先導していけばいいのかな、と。版元は質の維持を題目にしてでも、石油の供給源のように、書籍の供給源として、バルブの栓を持つのが大事だ。
・・・いかん、熱くなってしまった。
いずれにせよ関係者の皆さん、米国企業に負けず頑張って!
応援してます。
PS
とか言いつつ、個人的には2-3人の作家を囲い込み、(デジタルを中心とした)マーケティング集団としてディストリビューター(配信する人)、もしくは、作家のプロダクションという道に興味があったりする。あれ?佐々木氏の言う出版社の将来像そのままか。(笑)