SideS
俺の記憶はいつから止まってしまったのだろうか。
分からない目覚めたら違う世界にいただけ。
「おはよう」
声をかけてくる男性は何者?
俺のことを知ってる人なのか?
「僕の家の前で倒れてたから。 あれから眠ったままで」
「あ、ありがとうございます」
倒れてたんだ。
よく分からないが倒れてたならそんな俺をここに置いてくれるなんて。
お人好しな人だ。
俺は自分が何者なのかも分かってない。
言えることは俺はオッドアイで施設で育った親のいない子供なだけ、いや、大人なのか?
なんで親がいないのかオッドアイが気に入らないのか。
みんなが嫌う目をしてることは施設のみんなが言ってから。
「僕は潤。 オッドアイなんて初めて見たけど素敵だね?」
今、なんて?
俺の聞き間違え?
素敵・・・
そんなはずないのに。
「ほんとにそう思うのか?」
潤さんは頷き
「綺麗だよ!! すっごく!! 」
興奮気味に言われて少しだけ心がポカポカするような温かい気持ちになる。
どうしてなのかどうしてそんな気持ちになるのか分からないけど嬉しい気持ちになる。
「翔、俺の名前。 潤さん、俺のこと避けないんだな」
この目を見せるとみんな嫌そうな顔になったり怖いと言って逃げたりする。
時にはこの目を潰そうとする人まで。
「なんで? 翔さん、綺麗なのに。それに病気の人ならいくらでもいるし変な人なんて沢山いるよ?」
「変な人・・・」
「そう。翔さんから見たら変な人かもしれないね僕は。でも、いいんだよ、僕だって嫌なところは1つや2つあるし」
「嫌なところ?」
潤さんがそんな人に見えないけど。
変と言えば変だ。
こんな俺を避けずに真っ直ぐ見つめて眩しい笑顔でいてさ。
でも、嫌なことなんてないと思うけど。
「僕さ、つい素直に言い過ぎちゃって傷つけちゃうんだよね。 空気読まないというか。 でも、嘘つけないし」
潤さんの心を見た気がする。
綺麗な心だ。
眩しいよ。
俺にはそんな明るい世界なんてないのに。
「嘘つけないことなんていい事じゃん」
「んー、人を傷つけちゃうなら時に嘘をつかなくちゃいけないと思うな。 ね? だから翔さんはその目を気にする必要ないよ。 なんと言われようと堂々としてていいよ」
「あ、ありがと」
こんな明るい世界じゃなかったはず。
具体的に何をしてたかどう生きていたかなんて覚えていない。
けど、ここはいてもいいのかもしれない。
俺の居場所があるのかもしれない。
色が見えるよ。
「まずはしっかりと食べて元気になることだね。栄養失調。 これじゃ傷は治りにくい。 ここにずっといるか出ていくかは自由だよ」
そんな、そんな優しくしないで。
そんな優しい記憶なんてないよ。
でも、記憶のない俺はいたいって思う。
ここにずっといたいって。
誰かに染ることは怖いことなのに。
「ありがと。 俺、あなたといる」
時に悪夢を見ると思うけど。
迷惑かけることが多いと思うけど。
それでも俺は染まるならあなたの色に染まりたい。
思い出したくないだけ思い出したくない記憶なんて沢山あったと思う。
でも、忘れることっていけないこと?
わざとでもないのに。
責めないあなたがいるならば俺はあなたがもし俺の事を利用しても許される。
何故ならそれでもきっと色がある世界で俺は既にあなたの虜だから。