SideJ



どうしてアンラッキーなんだろう。

幸せになることも怖いくせにそんなことを思ってしまう。


人生で幸せだった日はいつだろう。

それが分からないぐらいアンラッキー。


でも、それでいい。

他人でも不幸な人が多いのは僕にとって辛いからそんな人たちがラッキーになってくれることを願っている。


占いを全部信じてる訳では無いけど。

基本最下位が多い。


「待って!!」


「しょおくん?」


ビックリした。

久しぶりに会った。


しょおくんはお姉ちゃんの恋人。

お姉ちゃんは海外で住んでいてテロに巻き込まれてしまった。


しょおくんは外国でお仕事していた。


今、日本にいたんだ。


「潤くん、元気だった?」


「それなりに」


「お姉さんのこと本当に申し訳ない。 帰れなかったこと日本で葬儀だったからそれに参加出来なかったことも」


しょおくん・・・

しょおくんが悪いことじゃないって分かってるよ。


でも、僕は小さい頃からアンラッキーだらけだから。


「しょおくんのせいじゃないよ。 僕がいけないから」


「どうして?」


「僕が幸せにならなければ良かっただけだから。僕は人に不幸をもたらしてしまうから」


するとしょおくんは僕の手を握って


「具体的には? じゃ、今から俺の家に来てもらう。 それまでの間に人が不幸になったら潤くんのせいなのかもしれない。 でも、不幸にならければそれは違うと思う」


え? 僕はよく分からないまま手を繋いで歩いた


ただ歩いているだけなのに自転車にぶつかってしまう。


横に並んでたわけじゃないのに。


「大丈夫?」


「うん」


「イヤホンで聴くのはいいけどスマホ見ながらなんてね」


それから家に着くまで危険だったけどしょおくんはギリギリセーフなことが多かった。


「あのさ、前向かない?」


「え?」


「潤くんがお姉さんを不幸にさせたなんて思ってない。 凄くショックな気持ちはあるけどそれでも前に進まないといけない。時は動いているから止まっていても何も始まらない。 お姉さんは潤くんが大好きだから前を向いて欲しいって思ってると思う」


「でも・・・」


「潤くんと遊んでいる時にたまたまサッカーボールが潤くんの頭に当たったり、食べている時に事件が発生したりしてたな。 でも、俺はそれは悪い思い出じゃなくていい思い出だよ?」


「しょおくん・・・」


「てか、面白い人生だと思う。 まぁ、さすがに自転車にぶつかるや車に引かれそうになるギリギリはやばいとは思うけど」


そうだよね、そんなのがそこそこの頻度であるのは変だよね。


「うん」


「ずっとどうしたらいいのかも分からなくて。潤くんが好きだったから。 俺はずっとその気持ちがあって今でも変わってなくて」


「え・・・」


「そう意味では俺のせいなんだろうな。 結婚はしてたけど籍には入れてなくて。 式もしてない。 お姉さんにとってはさっさと海外に逃げたかった思いだったから俺と結婚することになっただけ」


「しょおくんの気持ちはお姉ちゃん知ってたのかな」


「俺はずっと抱えてきた。潤くんのお姉さんは家族を守るために俺がちょうど海外に行く時に行くことになった」


どういうこと?

お姉ちゃんはどうして勝手に・・・


「俺もお姉さんも人には言えない思いを抱えていたから逃げた。 お姉さんは潤くんのことは大切にしたい気持ちはあったけど潤くんのキラキラとした輝きに嫉妬を抱えてしまっていたんだ。だから謝らなくてはいけないのは俺の方だ


そうだったんだ・・・

そんなことが・・・

しょおくんの気持ちもお姉ちゃんの気持ちも分かってなかったのは僕の方なんだね?


「ごめんなさい、何も知らなくて」


「潤くんのお姉さんはそれでも潤くんを心配していたんだ。 悪く思わないでくれ 」


「しょおくん・・・」


「こうして戻ってきたのは仕事の関係もあるけどもう前を向かないとダメかなって。 逃げてたけど逃げても何も変わらなかった。 むしろどんどん罪悪感しかなかった」


「そっか」


「こんな俺だけど付き合ってくれる? 恋人として」


ギュッと抱きしめられた。

しょおくん、泣きそうな顔をしていた。

そんなに・・・

そんなに思ってくれてるなんて。


「うん、こんな僕だけどよろしくお願いします」


「多分なんだけど潤くんのアンラッキーは自分は不幸だと思えば思うほど起こることなんじゃないかな。 潤くんを見ているといつもキラキラしていて眩しかった。それが今日見たらキラキラしてなかった。 輝いている潤くんの方が俺は大好きなんだ」


「しょおくん・・・」


お姉ちゃんが事故にあった日、僕は多分一番幸せな事だった。


それは恋人からプロボーズされたの。

だけど、次の日にその恋人は突然別れて欲しいと言ってきた。


僕もその恋人と幸せになんかなれないと思ったから了承した。

 

「うん、俺は信じてる。 また潤くんが幸せになる日があることを。 例えそこにアンラッキーなことが起きても。 ちょっとしたアンラッキーがラッキーに変わることもあるかもじゃん?」


「そっか。 そうだね」


「それに俺は今、幸せ者だ。 仕事がこっちになったのは結果が悪くてさ。 求められている仕事が上手く出来てなくてさ。 だから落ち込んでた。 だけどこうして潤くんに会えると思うと今思えばこれはラッキーなことなんじゃないかって」


しょおくんのお仕事はマネージャーらしい。

お店のね。


「そんなことないよ!! しょおくんは実績があるのに」


「ふふっ、潤くんは優しいな。 ここでは自分の思うままに出来ないかもしれない。 海外の方が自由だけど仕事には厳しいんだ。 でも、自分なりに頑張ろうと思う」


「うん、頑張って!!」


しょおくんは頑張り屋さんだから。

しょおくんはしょおくんなりに落ち込んでもこうして前を向く力があるんだ。


「俺には潤くんが信じてくれる。 だから潤くんも思うままに行動したりやりたいことをやったりして? 俺はそれを信じてるから」


「ありがと」


本当は誰かにこうして背中を押して欲しかった

幸せになっちゃいけないけど・・・

でも、それって辛い。


人が不幸になるぐらいなら自分がって思うけどそれでも人が不幸になることはある。


「潤、恋人生活スタートな?」


「うん」


ふふっ、しょおくんと恋人生活なんて不思議だけど楽しそうだって思える。


それが1番僕には前を向く日々になるのかもしれないと思った。