SideJ
「潤くん、高校通ってみる?」
「え?」
「お金なら心配しないで」
高校に通うなんて考えたことがなかった。
「それなりの収入はあるし。 ね? 高校に通ってみない?」
「んー、僕苦手だからいい」
「まーくんも通ってるんだよ?」
「行かない」
両親は事故死で。
それから親戚のカズさんが僕のお世話をしてくれるようになった。
僕は特定の人としか話せない。
だから中学校はパソコンを使ってレポートを送っていた。
「分かった。 じゃ、中学と同じようなら大丈夫かな」
そう言ってカズさんは電話し始めた。
「大丈夫。 初めて会うとは思うけど私の友達の友達だから」
カズさんの友達の友達?
「智くんの友達?」
「そうだね、早速来たからには外の勉強をして貰おうかな」
「外?」
「そう。 貴方ならきっといい感じに潤くんを変えてくれるでしょう。潤くんを外に連れ出して色々と教えるのが翔ちゃんの役目ですかね 」
すると僕を見て
「理解はした。 引きこもりってこと?」
引きこもりなんて失礼な。
1人でお買い物は出来るし。
「んー、外に出れない訳では無いから違うかな。連れ出したら理解すると思う」
「引き受けるよ。 じゃ、行こうか」
えー、引っ張られながら僕は家を出た。
「どこ行きたい?」
「え?」
「行きたいところに行こうか」
行きたいところ?
そんなところはない。
この地域から離れることは怖い。
地元なら歩けるけれど都心に行ったら人が多すぎる。
「困ったな。 何か欲しいものとかある?」
「欲しいもの?」
「そう。 ないの?」
「特にはないかな」
そう言えば
「じゃ、お腹空いたからさちょっと付き合って?何がいいかな」
近くにあるのがマックだったからマックになった。
そういえば僕もお腹が空いていた。
「ね、今日ってお泊まりもありかな?」
「え?」
「俺の家には犬しかいないからさ。 と言ってもそんなに懐かれなくてさ・・・ 」
懐かれないんだ。
でも、お泊まりって。
「まぁ、ニノには連絡しとくからそれでいい?」
犬を見てみたい思いで頷いた。
それから都心に向かう電車に乗った。
ほんとおじさんおばさんって怖い。
なんで変な目で見られたり睨まれたりしなきゃいけないのか。
でも、先生が手をぎゅっと握ってくれるから動揺することは無かった。
駅で降りて改札を出てやっと空気が吸えた。
先生のお家に着くと
ワンっと鳴き声がした。
「お、シロ~」
シロって名前らしい。
シロは先生の目の前まで来た。
「ただいま」
シロを見る目が優しい。
シロは飼い主さんに愛されているんだね。
「シロ~、今日はお客さんが来てるよ」
ワンワンと嬉しそうに僕の足元に来た。
「可愛い」
抱き上げると嬉しそう。
「人は無理でも動物には話せるってこと? 過去に何があったかは聞いてないし潤が言いたくないなら聞かない。だけど触れ合うって悪いことじゃないはずだ。 たったの一言だけでも発してみたらいい。 そこで初めて触れ合うことになる。言葉だけじゃない。 例えば物が落ちたら拾うだけでもいいんだ」
「え?」
「言葉が全てではないけど。 触れ合うことは大切なことだ。 家で仕事をやるとして。 でも、話すことはあるよね? リモートで。 だから、挨拶やお礼は話そうか。 それだけでいいんだ。 そこから発展していくから」
触れ合う。
言葉で触れ合ったり態度で触れ合うこと。
無理に話そうとする必要は無いのか。
たった一言だけでもいいんだ。
「さっきのシロに対して可愛いと言った。 それだけでも通じる。 そこから話が発展するかしないかはその人次第だけど悪いことは言ってない。 動物と同じように人間にも同じ感じでいいんだ」
少しは怖くはなくなるのかな。
先生が言ってることが間違ってるとは思わなかった。