冬休み前、最後の幼稚園だから、少し寂しいかな。

遊んでる時間が楽しいからね。

今日も一人一人とお別れして・・・
 
中には寂しいって言ってくれた子もいて嬉しかったな。

この幼稚園で担任を持つのは2年目なんだよね

他の人と比べてたら新人な僕はたまに嫌そうな目で見られてることも知ってる。

生意気とか聞こえても無視無視!

そんなの、意味不明だし、モテるからって嫉妬するって意味わかんない、僕はモテないんだけど!

櫻井さんがお迎えに来たのに・・・

ここに来ないでと言ったのに来ちゃったお母さん。

後ろに櫻井さんがいるのにな・・・

「仕事中なんだけど」

「まだなの?」

「だからさ、決めれるはずないでしょ!」

「元は貴方が悪いんでしょ!」

「何が悪いの? 僕はやりたいことを選んだだけだよ? 後継者がいない、そんなの母さん達が探せばいいでしょ!

なんで僕に押し付けるの?

「あの・・・」

多分僕たちの喧嘩を止めたいと思って声を掛けたのだろう。

「あら、いいじゃない!」

「え?」

「は?」

「カッコイイじゃない! この方になら任せられそうだわ!」

櫻井さんを狙いやがる。
失礼な人、櫻井さんは忙しくて社長なんてしてたら潰れるよ。

「えっと・・・、何を?」

「ウチの事務所の後継者として働いて欲しいのよ! 今すぐじゃないけど、そのうち社長になってもらうわ!」

櫻井さんは少し考え

「子供たちが優先なので、まず、引き取ってもいいですか? それから俺の家でゆっくりと話しませんか?」

さすが、櫻井さん・・・

「いいでしょう」

「ありがとうございます、雅紀~、カズ~」

片付けが終わった2人は櫻井さんの所へダッシュ。

「楽しかったか?」

「うん」

「たのちかったー!」

「ふふっ、それは良かった」

あれ・・・?
お母さんこんなにニコニコする人だっけ?
ココロの奥底からニコニコする人だっけ?

「今日もお利口さんだったもんね?」

それからいつもの挨拶して、最後やることをやって早めに上がらせてもらった。

それから櫻井さんのお家に向かった。

「で、さっきの話しの続きしてください」

「ウチの事務所は芸能事務所なのよ、そこでそろそろ年になってきた社長の後継者を探してます」

「なぜ俺が?」

「有能な人、見た目も大切だけど、中身も良さそうな人だと思ったの、潤が1番の後継者なんだけど嫌がるからね・・・」

「絶対にやらないからね、櫻井さんも断っても大丈夫だからね?」

櫻井さんは少し考え始めて

「今は子供たちが小さいので、その時間に間に合うような仕事が出来るならそのお誘い受けますけど、それが無理ならお断りさせて貰います」

「奥さんはいないの?」

あー、旦那さんだと思ってるよね・・・

「そう思いますよね・・・、俺は男と結婚しました」

「ゲイなの?」

お母さんは偏見は無いから別にどうってことは無いけど。

「そうです」

「私は偏見がないから全然大丈夫なんだけど、夫さんは?」

櫻井さんは少し寂しそうに

「夫とは別れました」

「そうなのね、何か事情があったのね・・・」

年少と年中は違う教室だから会わなかったな。

「いいわ、子供たちが大きくなってから本格的な仕事を任せる、それまでは子会社の方で働いてもらえるかしら?」

確か・・・

「それって、本?」

「ええ、雑誌よ」

「え? 確か、ファッション専門ですよね!

「知ってるの?」

そう聞けば

「俺には妹がいるからその雑誌は見たことあるけど、俺になんかそんな仕事ができるのかな」

ファッション誌と言ってもファッションを分かってないといけないわけでなない。

「大丈夫よ、ファッション用語が分かってなくても、問題はその企画とか、校閲とかの話しよ」

そう言われると少しホッとしたみたい。

「でも、企画とかってそんなに早く終わる訳でもないし、家でそんなにやれる訳でもない」

そうだね、家事て双子だもんね。

「締切は他の人よりも少し遅くはするわ、季節に合うものだったら更に早めから取り組むことになりそうね」

「ほんとに、やれるだけの時間でもいいのであればお受けします」

「うん、後日、見学してみてもう一度決めるのもありだからね?」

「はい、ありがとうございます」

お母さんは帰った。

櫻井さんはベットに寝っ転がり始めた。

「行ってみたら変わるかもだけど、行って損はないと思う、俺、ずっと仕事探してたんだよ」

そうなんだ・・・

だから、なかなか迎えに行けない時期があったんだね?

「いつまで智くんのお金で生きていけるか分からない、バイトしてもやっぱり貯金にはならないし、喧嘩したし」

け、喧嘩!?

「大丈夫なの?」

「レイプされそうになったから蹴飛ばしたら殴られたよ」

「え? ほんとに平気なの?」

そう聞けば櫻井さんはクスケス笑って

「平気だよ、バイトは首だらうけどね? それに俺は仕事するのが好きなのかなって、逃げてるわけじゃないけど、カズや、雅紀のたちの為にも必要な資金は沢山だと思ってね?」

しっかりとした考えがあるんだね。

「どこを応募しても中途採用じゃ無理みたいだだから、そんな俺に仕事があるなんて嬉しいことなんだ」

やっぱりしっかりとしてる。

「智くん、不倫したんだ・・・」

「智さん?」

櫻井さんの旦那さん?

「元夫、今は新しい家庭があるよ、俺たちは?俺たちの家庭は? でも、出ていったよ」

そんな過去があったんだ・・・

「その奥さんの性別は知らないけど、俺なんかよりもいい人なんだなって、向こうは妊娠してたらしい」

そんな・・・向こうは妊娠してたからってそっちを選んだんだ。

「でも、出ていってから何ヶ月ぐらいか忘れたけど、智くんから電話あったの、浮気がバレたからしてないことを証明して欲しいって、俺との関係がバレたからって・・・」

寂しそうだけど吹っ切れてるようにも見える。

「そうだったんだ・・・」

「でも、幸せだと思う、カズたちが笑ってくれてるから、それは先生のおかけだよ」

僕?

「何もしてないよ? 楽しくいて欲しいなとは思うけど全員か全員懐く訳じゃないから、その中でカズくんと雅紀くんが僕に懐いてくれる、初めて会った時から」

時には落ち込むけど、僕に元気を与えてくれるのは雅紀くんとカズくんだった。

「んー、カズはそんなに懐くタイプじゃないのに懐いたなら、先生の優しさを知ってるからじゃない?」

そう言われて僕は凄く嬉しかった。

それから、僕たちは少しずつ色んなことを話すようになった。