あ、そういう意味で食べたいわけじゃなかったのに・・・、食べてしまっていた。
でも、あなたは逃げもせず、痛そうな顔もしない。 痛くないの?
「ふふっ、満足出来た?」
え? 思いもよらない言葉が僕の胸に突き刺さる。
どうしたらいいの? このままだとあなたの腕は使えなくなっちゃう。
両親でさえそこまではしないのに・・・。
「ごめんなさい」
何度謝ってきっと許さなれない罪。
「君の家どこ?」
「え?」
「親がいるだろ、送ってく」
え? 何で? けど、断らせてくれない。
その瞳が言ってるから。
「うん」
途中に水があったからハンカチを濡らして手当した。
「何でしてくれるの?」
そう聞かれてやっぱりそういう生き物だと思われてるわけだから。
「腕が無くなったら大変じゃん、それに人を殺すことはしない主義なの」
そう言えば
「ふーん、なるほどね」
そう言ってクスッと笑ってた。
「それに、基本血は飲まないから」
そう言えば
「罪悪感? それとも、何か他の理由?」
興味あるの?
「んー、罪悪感も多少はあるし、動物さえもそんなに飲まないの、人間が食べるような食べ物で足りるから」
ってなんであなたにこんなに話しちゃうのだろうか。
「それじゃあ、君は人間になりたいってこと?と言うより、人間に近い心を持ってるから、きっとそう感じるのが正しそうだな」
人の心? 僕は人間の心なの?
僕の家に着くとお母さんは少し心配した顔をしていた。 嘘なくせに、心配なんてこれっぽっちもしてない癖に。
お母さんはしょおくんを見て
「その怪我は?」
そう聞かれてしょおくんは
「これですか? ふふっ、ご存知じゃないですか? ここの家にいる全員分かってますよね?」
そう聞けばみんなビックリした表情になってお姉ちゃんは
「信じられない・・・、潤、やったの?」
「やっちゃった」
正確に言えばやってたみたいなんだけどね?
「興味があるから秘密にはしといてあげてもいいですけどね・・・」
吸血鬼に? 興味があるってこと?
「ねー、名前は?」
お姉ちゃん目がキラキラしてるのは気のせい?
するとあなたは少し考え込んだ。
「僕も知りたいな、ダメ?」
そう聞くとあなたは少し溜息をついて
「櫻井翔だよ、宜しくね?」
あ、僕の手を握って握手してきた。
「僕は潤だよ、宜しくお願いします」
ふふっ、するとしょおさんは
「潤ね、俺の名前を知ったってことはこれで秘密はおあいこかな?」
確かにって名前は秘密なの?
それからお母さんに色々と聞かれて僕の家庭教師となった。
ふふっ、家庭教師か。
これなら僕はお家から出なくてもいいし、自由な時間から始められるからいいよね。