一時的撤退を執拗に勧めている。
 いさぎよく損して退く。これは大事なことだと思っているからである。

 いわゆる「損切り」である。
 高値の物件をかかえて値下げもせず、金利返済地獄に墜ちるのは、下の下というものである。

 三井家の家訓に「小さき益をあげて、大きなる利益を捨つることなかれ」とある。
 退く時は、見栄や外聞を気にせず、損切りして在庫処分をして、さっさと撤退することが大事だということである。

 マンション市況が悪くなり、不況期に突入すると、かならず「販売の時代」であると言われる。
 だがあの手この手の営業努力、販売促進努力を駆使しても、無駄なときは無駄なのである。

 いくら販売努力をしても稔りが少ない時期があるものである。根本の価格がそのときの市場から乖離しているのが最大の原因だが、その根本を改善しないごまかしの努力は結局のところ効果薄となってしまう。

 そういうときの最後の販売手段が、値下げである。だが、値下げしても販売効果に繋がらない場合が多い。
 けれども値下げが販売手段にならない、ということではない。表立ってでなく、営業段階で内緒で値引きをしていたためということでもない。
 いざ値下げに踏み切ってみたものの、その時点では値下げ、値引きが一般化していたため、申し分程度の値下げではインパクトがなかったのである。

 どこもかしこも値下げ、値引きをしているためユーザーは慣れてしまっているのである。そのうえ、時間が経つにつれて、さらに市場相場が下がるという悪循環にみまわれ、ますます販売効果がなくなってしまうのである。

 値下げは、
 ■短期に完売させる目標で
 ■思い切ってすること
である。
 これが値下げの極意だ。
 つじつま合わせの値下げでお茶をにごすといったことや、半年ぐらいの完売目標で値下げをするというのではかならず失敗する。少しでも損を少なくするような中途半端な値下げは、赤字を確実に大きくするだけである。

 既契約者に返金し、思いきった値下げをしていれば短期完売できたのに決断しない。決断を先送りにしているうちに相場がさらに下がる。そして結局、赤字をより膨らませる値下げをせざるえない状況に追いこまれるのが、優柔不断な値下げである。

 値下げには、思いきった決断力が必要である。中途半端な値下げでは、さらに値下げすることになる。
 ついには値下げそのものをユーザーは信用しなくなるである。
(次回 販売促進の基本と逃れられない循環)