リーダーシップと組織コミュニティがないとき、デベロッパーは暴走する可能性が高い。
 
 しかしほかにも原因がある。
 そのほかの原因で第一にあげなければならないのは、事業拡大路線が人を盲目にさせるという点である。

 右肩上がりのときはよいが、市場が好況から不況への転換点にあるのに事業が依然として拡大路線のままであるときが、もっとも危険だ。
 
 「なぜ、あのような物件(用地)に手を出したのだろうか」と、あとで後悔することがある。それについては先にも少しふれた。
 そういう物件は、かならず長期販売を強いられる。なぜなら、そういう時期には割安価格で用地を仕込めないからである。とにかく強気でないと用地が仕込めない。自社だけが事業を拡大しているのではないからだ。ほぼ同時期に、各社とも拡大路線を敷き、惰性のまま事業を拡大しつづけ、崖っぷちにきているときでも用地を奪い合うことをやめないのである。
 
 しかも強気で物件を仕込める理由を市場がちゃんと準備してくれている。
 市況サイクルのめぐりあわせと言うべきか。そういう時期はいつも「供給は、依然活発。月間(発売初月)契約率は70%以上を維持しつづけている」とか、「予想に反して市況は好転した」などと言ってくれるのである。

 

 まだ市場は堅調に推移しているから、「もっと事業を拡大できますよ」とアドバイスしてくれる。そして、昼はゴルフ、夜は会合と毎日が忙しい。疲労が日ごと積み重なり、「もうなんでもやってしまえ」と、ついには思ってしまう。