昔イジメていた同級生に、数十年ぶりに会って謝った俺は耳を疑った。
…ユルサナイ?
今、許さないって言った…?
「許せるわけないでしょ? 私が受けた絶望や苦しみ、悲しみ、憎しみや殺意がたかが一度の謝罪で消えてなくなるとでも?」
サトミは笑みを崩さずに言う。
…サツイ?
今、殺意って言った?
俺たちのこと、殺したいぐらい憎んでたってことか?
「大丈夫よ。あんたたちは今の今まで許されることなく生きて来られたんだから、これからだって許されなくても生きて行けるでしょ?」
「…え? いや、まあ、確かにそうなんだけど」
『許されない』というか、ぶっ殺されかねないという現状を知ってしまったら、なんだか居心地が…。
「…生き心地が悪い?」
サトミの言葉に思わず頷く。
「今さら何を言っているのよ。あんたたちはこの世で最も見下したこの私に、家族や愛する人には決して見せたくない一番醜い顔をさらしているのよ? 今さら生きにくさを感じることないでしょ」
醜い顔って…?
思わず顔に手をやると、サトミはふっと笑って言った。
「醜いわよ、人のことを罵っている瞬間の顔って。そんなことにも気付いてなかったの? 」
俺は一体、どんな顔をしていたのだろうか。
急に怖くなった。
俺が不安を感じていると、サトミは畳み掛けるように言った。
「しかも謝るの遅いし。私が転校する時に謝ってくれた同級生も何人かいたのに、あんたたちは今さら何をグズグズ言い訳しに来ているの?」
俺たちは返す言葉もなく、立ち尽くす。
口調はキツいが、相変わらずニコニコと微笑を浮かべているサトミが段々怖くなってきた。
続く