同窓会の日が近付くにつれて、俺は気持ちがたかぶった。
とにかく彼女に会って一言謝りたい。
許してくれなくても良い。
ただ謝りたいのだ。
そうすれば、息子に堂々と言える。
「父さんも昔、イジメてしまった事があるけど、相手にちゃんと謝ったぞ。お前も謝るんだ」と。
「やってしまったことは取り返しがつかないけれど、自分が悪かったことに気付き、反省して同じ過ちを犯さないことが大事なんだ」と。
そんなことを考えているうちに、ついにその日がやって来た。
都内にあるホテルの会場に行くと、まるで知らない顔の中に見知った顔がチラホラ見受けられた。
全員同窓生のはずだが、年月が経つうちに顔が変わって誰だか判らない。
名乗られて始めて判るヤツもいれば、面影が残っているヤツもいる。
そんな中、幼馴染みのタカポンを捕まえて話しかける。
「おう、久しぶりだな。最近どう?」というとりとめのない話から始め、やがて尋ねてみた。
「…なぁ、今日はサトミが来てるらしいな。誰だか判るか?」
タカポンは俺と一緒にサトミをからかっていた。
そのせいか、微妙な面持ちで室内の一角を指差した。
そこには黒いロング丈のワンピースと赤いショールに身を包んだ女性が、他の同窓生と談笑している姿があった。
俺が「…あれ、サトミか?」と尋ねると、「間違いないよ。名札に書いてあったし」とタカポンが言う。
小学生の頃は地味で目立たない小柄な少女にだったが、今やスラリと背が伸びて顔立ちも華やいで見える。
正直、ホッとした。
不幸になっていたらどうしようと思っていたのだ。
いや、彼女が不幸になっていても、それは俺たちがイジメたこととは関係がないだろう。
しかし、イジメた相手が幸せそうだと、何故だか安心した。
彼女が他の同窓生と話している姿を肴にするように、俺とタカポンはビールを飲み交わした。
続く