判例プラクティス憲法に、内閣総理大臣の異議の判例が載っていた。
東京都公安委員会が行ったデモ行進のコース変更条件付き許可処分に対し、
コース変更の条件を取消しを求める訴えが起こされ、条件の執行停止の
申立ても行われた。
東京地裁はこの申立てを受け、コース変更条件の効力を停止する決定をした。
ところが、内閣総理大臣が異議申立てをしたので、裁判所は決定を取り消した。
内閣総理大臣の異議は違法として国家賠償請求を求めたが、棄却された。
異議の理由の当否についての判断権を有しない・・政治責任の問題として
国会において検討されるべきことがらであり、適法、違法の問題として、
裁判所で審判の対象となる問題ではない、と裁判所はした。
執行停止を裁判所が決定しても、内閣総理大臣はひっくり返せるのだ。
これは由々しき問題ではないか。
安保関連法案が違法だと訴えて集団的自衛権に基づく自衛隊の海外派遣の
決定を執行停止を申し立て、仮に裁判所が執行停止にしても内閣総理大臣は
ひっくり返すことができるということだろうか。
国交省は、沖縄県の辺野古の埋め立て承認取消しを執行停止処分としたが、
沖縄県は、この決定の取り消しを求める抗告訴訟を提起し、その執行停止処分
の執行停止を申し立てて、仮に裁判所がそれを決定しても内閣総理大臣は
ひっくり返すことができるということだろうか。
そうであるなら、過半数を握った内閣総理大臣の専制を止められなくなる。
三権分立により国民の権利を守る立憲主義の日本国憲法にあって、
内閣総理大臣の異議制度は違憲ではなかろうか。