日刊スポーツ

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2020年7月28日11時0分

聖地巡礼

フィギュアスケートが欧米から日本に伝わって100年余り。日本フィギュアの歴史が刻まれる中で、転機となった場所、リンクがある。歴史的な名所を紹介する。

 

<名古屋スポーツセンター>

 

庶民に親しまれる名古屋市中区の大須観音から3分程度歩くと、国道19号沿いにスケート場がある。誕生は1953年(昭28)。プロ野球なども行われた大須球場の跡地に建てられた。60年以上の歴史を刻む名所で伊藤みどり、浅田真央、村上佳菜子、宇野昌磨ら多くの選手が育った。

 

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左から村上佳菜子さん、伊藤みどりさん、浅田真央さん、宇野昌磨のプレートが飾られた大須スケートリンク

 

名古屋スポーツセンターの藤田朋宏さん(48)は今も頭に残るシーンを回想する。「伊藤みどりさんが滑り始めたら、みんながリンクの脇に並んで、かぶりつくように見ていました」。92年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得した伊藤だが、一般営業中に練習することも多かった。すると、カップルや家族連れなど一般利用者が自然とリンクの中央部分を空ける。世界の滑りにぐっと見入り、声援を送る温かい場所だった。

 

現在はフィギュアスケート、アイスホッケーのチームがリンクを利用する。トップ選手が一般営業中に滑ることは少なくなったが、チームに在籍する競技者と一般利用者が時間を共にするシーンは多い。そのため、13年の改修工事でリンクの中央部分を青色に塗った。混雑時は青色部分で競技者がジャンプやスピンを練習し、一般利用者は外側でスケートを楽しむ。藤田さんは「その時、その時でみなさんに楽しんでいただける方法を考えています」と柔軟に対応してきた。

 

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大須スケートリンクの一角には伊藤みどりさん、浅田真央さんらの色紙やスケート靴が展示されている

 

リンクの壁には浅田ら4選手の大型パネルが設置され、施設の一角には大須から世界に飛び立った選手のスケート靴やサイン色紙が飾られている。地下鉄大須観音駅から徒歩5分と立地が良く、大学生・一般は貸し靴料を含んで1800円。年中無休で季節を選ばないため、娯楽として多くの地域住民が足を踏み入れる。トップスケーターを身近に感じられることも、名古屋から次々と有力選手が生まれる一因かもしれない。

 

藤田さんは受付横の仕事場から、時折窓越しのリンクを見つめる。「『あれ? あの子、あんなにうまくなったんだ』とか発見がある。五輪を目指す選手も小さい頃を知っているからこそ(活躍が)うれしいです」。大須の温かさは、ずっと変わらない。(2017年12月17日紙面から。年齢は掲載当時)

 


 

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