産経ニュース
2019年2月18日
全国的にスケート場の減少が著しいなか、京都と大阪で新たな屋内スケート場が年内にオープンする。関西でスケート場が2カ所も新設されるのは珍しいという。莫大(ばくだい)な電気代がかかり維持管理が難しいとされるスケート場がなぜ今、相次いで新設されるのか。背景を探った。(吉国在)
オープンするのは、いずれも通年営業の屋内スケート場「京都アイスアリーナ(仮称)」(京都府宇治市)と「関空アイスアリーナ」(大阪府泉佐野市)。
京都アイスの事業に携わる京都府の担当者は「近隣にあった民間施設が相次いで閉鎖し、リンクが足りないという要望が多かった」と理由を説明。関空アイスを運営する一般社団法人の高橋一(はじめ)理事も「天候や季節に左右されない練習場所を確保したかった」と話す。
文部科学省によると、学校施設を含む全国のスケート場は、バブル期だった昭和60年の940カ所をピークに減少。平成27年には、213カ所と4分の1にまで落ち込んだ。近畿6府県でもピーク時の54カ所から27年には15カ所まで減り、その後も大阪府柏原市、守口市の老舗スケート場が相次いで姿を消している。リンクに氷を張る莫大な電気代に加え、老朽施設の建て替え費用が捻出できなかったためとされる。
一方で既存のスケート場は多くの利用者でにぎわっている。大阪市浪速区の「浪速アイススケート場」の担当者は「冬季を除くオフシーズンは、主に競技者が利用する一般営業時間外の予約がすぐに埋まる状態だ」と明かす。
背景には、関西大出身でバンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔選手や2月の四大陸選手権で優勝した紀平梨花選手ら関西勢の活躍で、フィギュアスケートを始める若い世代が急増するなど、近年のスケート人気の高まりにある。
日本スケート連盟によると、平成30年度のフィギュアスケート登録競技者数は5200人。うち近畿6府県は5分の1以上を占める1112人で、ここ10年の競技人口の増加率も全国平均を上回る2割以上の伸びだ。
関西国際空港対岸にできる関空アイスは、立地を生かして国内選手が海外遠征する際の直前合宿や海外チームの利用を見込むほか、「東南アジアでもスケートブームが起きている。競技者だけでなく、インバウンド(訪日外国人客)の需要を取り込みたい」(高橋理事)との思惑もある。
経済効果に詳しい関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)は「関西勢の活躍で地元競技者の裾野が広がっており、関空アイスだけでもオープン初年度の経済効果は約65億円と推計される。観光地・京都も国内外の需要を呼び込みやすい環境にあり、地元が活性化する起爆剤となり得る」と話している。
